次のフロアに着いてからは床が痛んでいないか気を付けながら辺りを調べていく。床には灰がこんもりと積もっていた為に目視では床の状態が確認出来ず、神経を磨り減らしていく。
「とりあえずこの部屋の床は大丈夫そうだね。」
 直斗の声に幸と鈴音は安心してため息をつく。
「建物の強度を調べるだけで一苦労ね。もう史料探しまで余裕がないわ。」
 鈴音は疲れて側にある焼け焦げた机に手をつく。すると灰が舞い上がってしまい、顔をしかめた。
「建物の構造を調べるのもトレジャーハンターの仕事のうちだから、ひとまず危険な場所がわかっただけでも成果ありと考えよう。」
 幸は先程の直斗の言葉を思い出しつつ、鈴音に言葉をかける。
 しかし本当に何もないものなのかと幸は辺りを見回した。けれども全体が焼け焦げていて目で見える箇所はどこも損傷が激しかった。
 その時鈴音がもたれ掛かっている机に引き出しがついている事に気付く。もしかしたら中は無事かと開けてみたくなり引き出しに手をかけたが、変形していて上手く引き出せない。
「ちょっと幸、また灰を舞い上がらせるつもり?」
 幸がムキになってガタガタと引く様子を見て、鈴音は机から離れた。すると鈴音が居なくなったせいで勢い余って机を倒してしまった。そして辺りに灰が舞い上がる。
「もう! 何回同じ事するのよ!」
「ごっごめん・・・。」
 鈴音は顔をしかめて幸の頭を軽く叩く。しかし幸の帽子に触れると、明らかに頭とは違う硬質な手触りがした。
「あら? これヘルメット入ってるの?」
 鈴音は興味が移り、幸の帽子をコツコツと叩く。
 その時遠くから足音が聞こえてきた。
「誰か居る!?
 3人は盗賊の可能性も考え身構える。足音はやや急ぎぎみでこちらに向かって歩いているようだった。
「もしかして、机を倒しちゃった音に気付いてこっちに来ているのかな!?
 幸は万一の事を思い顔に焦りを滲ませる。
 その瞬間入口から人が飛び出してきた。しかしその姿は考古学者だった為、3人は内心で安堵のため息をついた。
「さっきからあちこち崩れる音が聞こえてきたんだけど、君達かい!?
 考古学者の男性は焦った顔で幸達に尋ねる。
「すみません、今のはうっかり机を倒してしまったんですが、その前には1つ下のフロアの床が歩いただけで抜け落ちてしまって・・・。」
 幸が困った顔で告げると、男性は驚いたのち困り果てた顔になった。
「そんな・・・。せっかく開いていなかった扉が開いてたというのに。下のフロアを調べるのは結局後回しになるな・・・。」
 男性は軽くため息をついたが、男性の言葉に幸達は遺跡を出る算段がついた事に安堵した。
「僕達は他の通路を通って最下階からこっちの通路に上がってきたんです。だから崩れ落ちたフロアの下のフロアも見てきたので、ざっとではありますが様子をお伝えしますよ。」
 直斗がそう言うと男性の表情が明るくなった。
「そうなのかい!? 他の通路からも繋がっているなら迂回して調べる事が出きるな。ぜひ後程研究所に報告に来てくれ。」
 でももう一方の道も危険ですよと伝えようとしたが、男性はそそくさと他の部屋へ向かってしまった。
 その様子を見送った後鈴音がため息をついた。
「よかった、何とか戻れそうね。」
「そうだね。このまま戻って研究所に報告しに行こう。」
 しかしその時遠くから地鳴りのような音が聞こえてきた。3人が驚いて気を引き締めた瞬間、自分達が立っているフロアが地震の様に揺れ始めた。
「わわわ! 今度は何!?
 するとつい先程出ていった考古学者が顔を真っ青にして駆け戻ってきた。
「君達! ここも崩れ落ちそうだ! 急いで上に戻りなさい!」
 男性が言うが早いか天井からパラパラと破片が降り始めていた。
 慌てて男性の後を追いかけ、次の階段を上って行き着いたフロアの奥へ進んでいくと、始めに幸がロックを解除した扉を見つけた。元の道へ無事に戻れたが、揺れは治まる気配がなかった。
「一旦遺跡を出よう!」
 そう言って男性が走り出し、幸と鈴音、直斗も後に続いた。
 走っていると前方で調査を行っていた考古学者達も急いで出口へ向かっている姿が見え、自然と足が速くなる。そして遺跡から出てある程度離れると揺れは弱まった。
「やっぱり遺跡が揺れてたみたいだ。」
 男性が呟いて一息ついた瞬間、遺跡が大きな音を立てて沈下した。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
 4人とも呆気に取られ、遺跡が沈んでいくのを放心して眺めていた。やがて考古学者達が慌てた様子で点呼をとっている声に気付いて青ざめた。
「もしかして! 遺跡に取り残された人が居るんじゃ!?
 慌てて集まっている考古学者達の元へ駆け寄ると1人の考古学者が幸達の姿を見て安堵の顔になった。
「よかった! 君達も脱出してたんだね。」
「中に取り残された人は!?
「大丈夫。全員居る。」
 その言葉に幸達も安心する。
「でも・・・、遺跡潰れちゃったわね・・・。」
 鈴音が残念そうに呟く。
「仕方ないさ。また掘り出すところから調査を進めていくよ。」
 鈴音の声を聞いた考古学者は苦笑して言った。
「・・・今となっては参考になるかわかりませんが、調査結果をお伝えしますね。」
 幸は少し気落ちした声で考古学者に今まで通った道のりのメモを見せる。
「大丈夫だ。潰れる前の状態が判るのは大事な事だ。助かるよ。」
 考古学者が慰めるように笑いかける。それを見て幸は少し気が楽になった。
(直斗さんもこの人も、皆前向きだな。私も見習わないと。)
 そして幸達は調査結果を伝える為、調査室へと足を向けた。

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