幸に案内され機械の合間をぬって進んでいくと、コンベアーやクレーンなどで運ばれてきた物が積み上がっていた。表層は折れたアームや崩落した壁、天井などの一部で覆われていたが、幸が掘り返したのか少し崩れた部分からは丈夫そうな金属板が覗いて見えた。
「この中に何かありそうなんですけれど、掘り返せそうでしょうか?」
「うーん、この量を3人で手作業は難しいな・・・。一先ずどういった物が埋もれているか確認して、持って帰れそうなら一部だけ持って帰ろうか。」
「そうですね。」
そうして3人で瓦礫を退けていく。ある程度退けると1メートル四方はある大きな金属板が何枚か出てきた。
「これは工場で加工される材料みたいだね。でも重いし大きいし、運ぶどころか動かすのも無理そうだ。これ以上は退けれそうもないし、ここは報告するだけにして次へ進もうか。」
「そうですね。」
直斗が手を止めて写真を撮る為に数歩下がる。幸と鈴音も瓦礫の山から退こうとしたが、
「わぁっ!」
「キャッ!」
ガシャーン!
うっかり自分達で退けた瓦礫に幸が足を取られ鈴音にもたれ掛かり、鈴音もバランスを崩して瓦礫の山に倒れこんでしまった。
「ごめん、鈴音。大丈夫?」
「部品の角が痛いけど何とか・・・。」
幸は慌てて鈴音の上から退く。鈴音が身体を起こそうと瓦礫の山に手を置くと、瓦礫が崩れて鈴音の手が埋もれてしまった。
「もうっ! 面倒な瓦礫ね!」
鈴音が手を抜く為に瓦礫を蹴飛ばす。ガシャンと瓦礫が崩れる音に続いて、今まで聞こえなかった金属が擦れ合う音が辺りに響き始めた。
「え! な、何!?」
続いて床が振動し始め、擦れ合う音が大きくなっていく。
すると突然瓦礫の山が動き始めた。幸と鈴音は山から離れようとしたが、床が揺れ再び倒れこんでしまう。
「2人共! 掴まって!」
直斗が手を差しのべる。その声で自分達がいる床が動いている事に気付き、慌てて直斗の手を掴む。直斗は2人を引き寄せようとしたが、床の動く速度が上がり、直斗も瓦礫側に倒れてしまった。
「ごっごめん! 蹴飛ばしたばっかりに!」
「いや、今は急いでここから逃げないと・・・。」
体勢を整え立ち上がるが、その時すでに長いトンネルの中に入ってしまっていた。
「まさかこの床までコンベアーになっていたなんて・・・。」
幸が辺りを見回すが、先程と違い人が歩く通路がない。
「とりあえずコンベアーから降りれそうな場所が来たら降りられるよう、瓦礫から離れておこうか。」
直斗が先導して瓦礫の山から降りる。それと同時に大量に何かが流れ落ちる音が聞こえてきた。前方を見ると奥の瓦礫が下へ落ちて見えなくなっていく。
「! 落ちる!」
気付いた瞬間には足場がなくなり、3人は空中に放り出される。幸い高さがなくすぐに再び新たなコンベアーの上に落ちたが、着地に失敗し身体を打ち付ける。身体を起こすと再び段差が見えた。
「また落ちるよ! 気を付けて!」
今度は体勢を整えてから段差を跳び、きちんと着地する。
それからもう二度段差を跳ぶと突き当たりが行き止まりになっていて瓦礫が次々にぶつかっていくのが見えた。
「! このままじゃぶつかる!」
「いや、突き当たりの右の壁が空いてる。そこに飛び込もう!」
瓦礫にぶつかりそうになる直前で3人は右へ飛び込んだ。勢い余ってそのまま転がってしまうが、無事にコンベアーから降りる事が出来た。