進んでいくうちにやがて地鳴りのような音が聞こえてきた。すると作業場らしき広い空間に出た。2メートル四方の大きな四角い物体が幾つか置かれてあり、そこから地鳴りのような音が聞こえている。
「何かの機械のようだ。しかも動いてる。」
 直斗が機械の周りを歩くが、熱を逃がす穴が開いている以外何の特徴もない箱だった。直斗はペンライトを取り出し穴を覗き込むと、巨大なモーターのようなものが見えた。
「うーん、何かわからないな・・・。」
 他の箱も同じように中を覗き込んでいく。
「そういえば、何で遺跡に電気が通ってるのかしら? 考古学者が通電させてる訳じゃないわよね?」
 鈴音が直斗の様子を見ながら幸に尋ねる。
「フロンティアの発電方法は太陽光をそのまま電力に変えるか、地下水脈にタービンを設置して発電するかが一般的だったみたい。太陽光は遺跡が地下に埋もれたままのものもあるからその多くは稼働していないだろうけれど、地下水なら今も流れている所が多いからそれで電気が供給されているんじゃないかな?」
「なるほど。・・・しかし恐ろしい話ね。ここが遺跡と化したのは50100年前って話じゃないのでしょ? 未だに動いてるってどんだけ耐久性あるのよ。」
 そう言って鈴音は箱をペチペチと叩く。
 すると直斗が奥へ進もうと提案したので幸達は後へと続いた。

 次の部屋に入ると膝下くらいの高さの台が奥へと長く続いていた。台の上はコンベアーになっており、何も乗せずに奥へと流れていた。
「本当に機械が動いている。何処かに止めるスイッチとかないのかな?」
 幸は機械の周辺を見回すが、スイッチになりそうな凹凸はおろか、スイッチなどを隠す為の扉や稼働状態を示す液晶パネルも見当たらない。
「この部屋からでは機械の操作は出来ないみたい。出来れば止めておきたかったのに・・・。」
 幸が不安そうに呟くと、直斗は「仕方ないさ。」と肩をすくめた。
「機械が作動してるとわかった以上、気をつけて進まないとね。」
 そう言ってコンベアーのすぐ横の通路を歩き始めた。通路は機械の点検や整備の為にしか使われないのか、すれ違う事が出来ない程狭く、壁や天井には最低限の照明しかついていない為薄暗い。壁からアームと思われる機械が所々から飛び出しているが、その多くは朽ちて先端がなくなっていた。床に落ちているアームのパーツを踏まないように気を付けていると、前方からコンベアーの作動音とは違う音が聞こえてきた。何かを叩きつけているような音に自然と歩みが慎重になる。やがて薄暗い通路の先に激しく動くシルエットを見つけた。直斗がペンライトの光量を増やし先を照らすと、長いアームが鞭のようにしなりながら激しく動いていた。
「ちょっ・・・、何アレ!?
「アーム・・・・・・だね?」
「どう見ても壊れて異常な動きをしているよね・・・。」
 3人とも足を止めて、しばしアームの動きを観察する。アームはコンベアーに打ち付けられたかと思うと、激しくしなって天井や壁にぶつかる。そしてその勢いを殺さぬまま再びコンベアーに打ち付けてアームが跳ね上がる。しかもそのアームの軌道が通路を塞いでしまっていた。
「これ・・・、どう見てもアームを避けて通らなきゃいけないよね・・・。」
 幸の困惑した声に鈴音が「嘘でしょ!?」と驚く。
「あんなのにぶつかったら、骨が折れるわよ。」
「アームを捕らえて止める事は出来ないかな?」
 直斗は床に転がっているアームのパーツの中で1番長い物を拾って構える。アームが降り下ろされた瞬間、軌道上にパーツを差し入れて動きを止めようとしたが、パーツはバキバキと音をたてて呆気なく折れてしまった。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・壊れて落ちてたパーツだからね! 壊れて当然だよね!」
 直斗が2人を不安にさせまいとフォローを入れるが、沈黙が広がるばかりだった。
「・・・やっぱり止められないなら、隙を見て通り抜けるしかないよね・・・。」
「そうだね。」
 3人は動きを止める事を諦め、アームの軌道をよく観察する。そしてそれぞれのタイミングで走り出しアームの下を滑り抜けた。
「・・・よし、抜けれた。」
「でもこの先もああいう壊れた機械が動いている可能性もあるのよね?」
 そう考えると思わずため息が出てしまう。
「まぁ・・・、それを承知で来たんだけどね。」
 鈴音は頬を叩いて気合いを入れ直し、再び歩き始めた。

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