幸と鈴音が席について料理を注文する。料理が来るまでの間鈴音は直斗からニッジョ遺跡でのあれやこれやを根掘り葉掘り聞き出していく。そして話に一区切りがつく頃に料理が到着した。
「直斗さんは今回ルイン遺跡をハントしに来たんですか?」
 鈴音が料理を受け取ろうとした隙に幸は話をすり替える。
「そうだよ。ルイン遺跡の調査は難しいみたいだし。」
「え、そうなんですか?」
 幸の反応に直斗の顔が引き締まる。
「今日研究所にお邪魔した時に聞いたんだけど、遺跡の電源が生きてて一部機械が作動してるんだって。元々は金属部品の加工工場だったらしくて、カッターやプレス機とか危ない機械も多くて迂闊に入れないって。」
「老朽化で予測が出来ない動きをするかもしれないですからね。」
「うん。・・・だからもし幸もハントに入る気でいるんなら、一緒に行かないか?」
 幸は驚いて直斗の顔を見る。その表情から幸を心配している事が見てとれた。
 鈴音の顔を伺うと、「幸のやりやすい方でいいわよ。」と答えた。その為幸は直斗と協力する事に決めた。
「それじゃあ、翌朝9時半に遺跡前の研究所で待ち合わせという事で。ハントの申請は僕がしておくよ。」
「ありがとうございます。」
 そうして直斗が会計をしようと立ち上がりズボンのポケットに手を突っ込んだが、そのままキョトンと立ち尽くしてしまった。
「? 直斗さん、どうかしました?」
 幸の呼び掛けに答えず、左右のポケット、後ろや上着のポケットにも手をやり、そして鞄の中を勢いよく漁り始める。
「どうしよう、財布がない!」
 直斗の顔が青ざめる。
「え!? 何処かに落としたんですか!」
 幸も驚いて机の周りの床を確認する。
「もしかしたら店内に落ちているかもしれません。どんなデザインの財布ですか?」
「二つ折の黒い合皮の財布で、端にブランドのロゴが箔押しされてるんだけど、何てブランドだったかな・・・」
 直斗と幸はオロオロして周辺を見回す。
「・・・・・・・・・もしかして、これ?」
 すると鈴音がソロソロと黒い財布を差し出した。
「ああ! これだよ! 一体どこに?」
 鈴音は顔を背けて、「ごめん、私が盗んだ・・・。」と小さく呟いた。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
 辺りに気まずい空気が流れる。
「だってしょうがないじゃん! 直斗さんも幸みたいな良いハンターだなんて知らなかったんだし!」
 幸の視線に耐えきれなくなった鈴音は逆ギレした。
「すみません直斗さん・・・。鈴音は以前トレジャーハンターと名乗る盗賊に詐欺にあって、それ以来ハンターを見かけたら財布を盗んでいるんです・・・。」
 幸は心底申し訳なさそうに直斗に謝る。
「はぁ・・・、そういう理由なら仕方ない・・・かな?」
 直斗は苦笑して財布を受けとる。
「あー! これからは抜けてそうなハンターは気を付けなきゃダメね!」
 鈴音は嘆くように反省したが、『抜けてる』という言葉に幸も直斗も顔を見合わせた。

前へ 次へ