「2人とも無事?」
「ええ・・・何とか・・・。」
「避難出来る場所が空いていてよかったよ・・・。」
 入り込んだ場所は広い空間になっていて朽ちたトラックが3台置かれている。突き当たりにはトラックが通れる大きさの扉が、右手奥には人が通る程度の大きさの扉があった。
「さっきのコンベアーで完成した部品を運んで、ここから出荷していたみたいだね。」
 直斗はトラックの中を覗き込んだが、運転席にクッションやツボ押し道具などが転がっているだけで、価値のある物は見当たらなかった。
「向こうの大きな扉はきっと建物の外に繋がる扉ですよね。」
 幸が今までの道のりのメモを取ってから直斗に追い付く。
「多分ね。でもこのフロアは地下に埋もれてるから扉を開けても遺跡からは出られないから・・・」
 直斗はもう1つある扉へと視線を向ける。
「あの扉からじゃないと戻れませんよね。」
 幸は頷いて扉を開けようとする。しかし鍵がかかっていて開かない。
「この扉も鍵がかかっているな。」
 扉の横にあるパネルには微かに『緊急ロック作動中』と表示されていた。画面に触れると正常に動いたのでそのまま操作し、鍵を開けた。しかし扉を動かそうにも固くて動かない。
「そりゃあ!」
 再び幸は力付くで開けると、中から大量の煤煙が上がる。
「ちょっ・・・! けほっけほっ! 幸! ・・・っけほっ、何同じ事やってんのよ!」
「ごめん、やっぱりこうするしかなくて・・・。」
 一旦扉から離れ、煙が落ち着くのを待つ。見通しがよくなり扉から中を覗き込むと、部屋の中は真っ黒に焼け焦げていた。
「もしかしたらここから最初に幸が開けた扉まで繋がってるかもしれないわね。」
「繋がっているといいんだけれども・・・。」
 部屋の中へ一歩踏み入ると、何かが焼けた残骸がカサカサと音を立てる。部屋の中には熱で変形した家具以外全て灰になっていて、元は何だったのか判らなくなっている。
 突き当たりに階段が見えたので、崩れないか確認してから登り始める。
「この辺りは皆焼けちゃっていて、持って帰れそうな史料がなさそうだね。」
 幸は残念そうに呟く。
 1つ上のフロアに着きあちこち部屋を覗き込むが、どの部屋も変形した家具と灰しか見当たらない。
「でも幸が扉のロックを解除してくれたおかげで、研究が捗るようになるよ。成果はあったさ。」
 そういって直斗は幸の頭を軽く撫でる。幸は少しむず痒くなって歩くスピードを早めた。
 その瞬間、幸の右足が床を踏み抜いた。
「ひゃあ!」
 幸い床はそれ以上崩れず、幸は前のめりに転けるだけで済んだ。
「だっ大丈夫!?
 驚いた直斗と鈴音が急ぎつつも慎重に駆け寄る。
「ビックリしたぁ・・・。床も結構痛んでいるんだね。」
 幸は直斗の手を借り、穴から足を抜いた。
「そうだね、気を付けないと・・・。」
 と言いながら今度は直斗が床を踏み抜いた。
「わぁ! こっちも抜けた!」
「もう、何やってるのよおわっ!」
 鈴音が呆れて近付いたら鈴音も床を踏み抜いた。
 しかしそれを皮切りに辺りにミシミシと嫌な音が響き渡る。
「ちょっ…! まさか、床が崩れる!?
 言うが早いか身体が下に落ちる感覚がする。
「走れ!」
 3人は慌てて階段のある方へ走っていく。後ろで崩れ落ちた床が下の階に当たって砕ける音を聞いて、必然と走る速度が上がる。直斗が先に階段に到着し崩れないか確認する。続いて鈴音も足をもつれさせながら跳び込む。鈴音は振り替えって幸に手を伸ばす。幸が鈴音の手を掴むと同時に幸が立っていた床が落ち、慌てて直斗が鈴音の身体を抱いて階段の方へ引き寄せた。
 直斗が勢い余って尻餅をついた時には先程までいたフロアの床が全て抜け落ちてしまっていた。
「・・・あ、危なかったぁ・・・。」
 3人は呆然と床がなくなった部屋を見つめた。
「これは動いてる機械がなくても結構危険だね。調査進められるかな・・・?」
「次に来る時は命綱が必要だね。」
 顔を青ざめさせつつも遺跡を出る為に階段を登り始めた。

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