上の階へ戻ると寒さはなくなったが、今度は足場の脆い箇所が増えて慎重に歩かざるを得なくなった。
足場が崩れたりしないか確認しつつ、自分が進んだルートを戻っていく。
「其れって歩いてきた道のメモ? わざわざメモしてるなんて準備万端だね。」
琳が幸のメモを覗き込んだ。
「トレジャーハントは史料を回収するだけじゃなく、遺跡内部の構造も調べるのが本来の仕事だからメモは大事なんだ。最初に入った人が地図を作っておけば、次に遺跡を調べる時にどこまで調査が進んでいるのか、どう調査を進めていくかを決める参考になるからね。」
「トレジャーハンターってそんな事もするんだ。」
琳と鏐飛が感心の声を上げる。
(そっか、きちんと申請してハントをしている人でも本来のやり方を知らない人がいるんだ・・・。)
きちんとした人がいたのが嬉しかった反面、少し寂しい気持ちになる。
他にも琳と鏐飛が尋ねてくる事に返事をしながら戻っていくと、不意に他の人の足音が聞こえてきた。
「考古学者かな?」
「いや、まだ発掘を行えている場所まで戻れていないから、盗賊の可能性が高そう。」
幸が曲がり角から静かに顔を覗かせると、軽装の男性が1人いた。そして案の定男性の腕には腕章がない。
「さっきの人達とはまた違う盗賊がいる。やっぱり別にも入口があると考えて良さそうだね。」
「そうだね。・・・そだ! あの人にその入口を聞くってどうかな!」
鏐飛は腕に着けていた腕章を外すと、それを琳に渡す。
「ちょっと聞いてくるから、ここで隠れてて。」
「え!? 鏐飛!?」
琳が止めようとするも鏐飛はさっと男性の前に飛び出していってしまった。
「あの〜、すみません、出口って何処っすかね〜?」
カムフラージュなのか、鏐飛は何故かチャラい口調で男性に話しかける。
「は? 何だお前?」
一方の男性は突然現れた子供に怪訝な顔をする。
「いや〜、遺跡に潜って一攫千金を狙ったんすけど、調子こいて深く潜ったらどの道から来たかわからなくなっちまって・・・。」
「ふん、バカだな。」
そう言って男性は置き去りにしようとした。
「ちょっ! ちょっと待って下さいっすよ。これでどうっすか?」
鏐飛はあわてて男性を引き止め、手に何かを握らせた。
「・・・こんだけか。」
そのまま手を握り込んでなおも男性は歩き去ろうとした。それを奪い返そうと鏐飛は男性の手首を強く握る。
「じゃあ考古学者に助けてもらうだけだし。そんとき秘密の入口の事バラしてやる。あとお前が潜入してる事も言ってやる。」
鏐飛が釜をかけると男性は舌打ちをし、億劫そうに道順を言い始めた。そして掴まれていた腕を振り払って奥へと歩いていった。
「さよなら、おれの晩飯代・・・。」
相手のズボンの中に入れられてしまったお金を名残惜しく見た後、幸と琳の元に戻ってきた。
「お待たせ。やっぱり別に入口があったよ!」
鏐飛が嬉しそうに報告するのを琳は睨み付けた。
「馬鹿! きちんと後先考えて行動してよ!」
「何だよ、結果オーライなんだから怒んないでよ。」
琳の言葉に鏐飛は不機嫌になる。
「まあまあ、一先ず教えて貰った道を進んでみよう?」
このままだと喧嘩が始まりそうな予感がした幸は、強引に2人の背中を押す。2人は不満そうながらも素直に幸の言う事に従った。