ヘリド遺跡に向かう為幾つかの村を通りすぎていくうち、次第に旅の資金が減ってきた。宿で幸は財布の中身を数えて地図と見比べる。
「そろそろトレジャーハントをしないと厳しくなってきたな・・・。この辺りにある遺跡は・・・、あ、ルイン遺跡があるんだ。」
 幸がお金と地図とにらめっこしている様子を鈴音は緊迫感のない顔で見つめる。
「なるほど、道理でこの辺りにトレジャーハンターらしき人が多いわけね。」
 幸が鈴音の方へ顔を向けると、鈴音も幸と同じように財布の中身を数えていたが、その財布の数が不自然に多い。
「一体いつの間にそんなに擦ってきたの・・・?」
「そりゃあ・・・道すがら。」
 鈴音は手当たり次第盗んでいた為正確にいつ盗んだのか思い出せず、曖昧に答える。
「・・・とりあえず、明日ルイン遺跡に行こうと思うんだけれど、いいかな?」
 幸はそれ以上尋ねる事を止め、財布を片付けた。
「ええ。そこはどんな遺跡なのかしら?」
「フロンティア最盛期に稼働していた工場みたいだけれど、損傷が激しくてあまり詳しくはわかっていないと聞いた事がある。これから食事場所を探すついでに遺跡についても調べていいかな?」
「もちろん。なら早速行きましょ。」
 鈴音は手早く財布を鞄に詰めて宿を出た。

 まずは食事をと幾つか店を覗いたが、ちょうど食事時とあってどこも混雑している。
「このお店も席が空いてなさそうね。先に遺跡の情報収集に行く?」
「そうだね・・・あ!」
 幸も店内を見回して諦めようとした時、1人テーブル席で食事している青年に目が行った。
 他の人に比べて高めの身長、やや癖のある赤茶色の髪に見覚えがあり、近くへ寄るとやはり見知った顔だった。
「直斗さん、お久しぶりです。」
 幸が声をかけると、青年は弾かれたように顔を上げた。
「! 幸じゃないか。久しぶりだね。ニッジョ遺跡での凍傷は大丈夫?」
「はい。もう何ともありません。直斗さんもお元気そうで何よりです。」
 幸が答えると直斗は心底嬉しそうに笑った。
「幸の知り合い?」
 横で様子を見ていた鈴音が幸に尋ねる。
「うん。こちら上田直斗さん。正しいトレジャーハンターで、以前一緒にハントをした事があるんだ。」
「幸以外にもきちんとしたハンターっていたのね。」
 鈴音が意外そうに驚いたので、思わず幸も直斗も苦笑する。
「直斗さん、こちらは私の友達の早瀬鈴音。訳があって出稼ぎの旅をしているんだけれど、遺跡に興味を持っていて一緒に遺跡を見て回っているんだ。」
 鈴音が泥棒だという事はふせ、直斗に紹介する。
「はじめまして。ところで幸、凍傷って何の事?」
 鈴音は直斗への挨拶も早々に、先程聞こえた不穏な単語を口にした。
「ちょっと・・・盗賊とやりあって・・・ね・・・。でも軽傷だったし、何にも問題なかったよ!」
 幸は悪さが見つかった子供のように歯切れ悪く目を反らす。
 しかし鈴音は目を反らさずじっと幸を見つめている。
「2人とも食事はまだかな? よかったら一緒に食べない? お店の中も混雑してるし。」
 何も喋らず硬直している幸と鈴音を見て、直斗は事態を動かそうと席に座るよう促す。
「そうね。彼から聞けばいい話よね。」
 鈴音は意地悪く笑い、席についた。それを見た直斗がごめんと言いたげな顔で幸を見た。

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