ようやくエレベーターのある通路まで戻ってきたが、すでにそこには朝倉と春日が待ち伏せしていた。
「おや、古賀君と飯恁Nを撒いてきたとは・・・。なかなかやりますね。」
朝倉が鞄の中から短い鉄棒を複数取り出して1つに繋ぎ合わせた。春日は拳銃のようなものを構えた。
「私達から史料を奪うよりも、自分達で史料を探した方が手間はかからないと思うんですが。」
幸はいつでも動けるよう無駄な力を抜きながら話しかける。
「確かにあんたらを捕まえるよりは、あたし達で探した方が楽なんだけどさ、」
春日が面倒そうに答え始める。
「
春日が幸の足元に向けて発砲する。さすがに弾丸を避ける事は出来ず、幸の左足の脛に当たった。
「つっ・・・。」
「幸!?」
「余所見は駄目ですよ。」
直斗が幸に近付こうとするのを朝倉が鉄棍を振り下ろして邪魔をした。
幸は打たれた個所を手で押さえた。しかし手で触れた部分は血の温かさなどなくひんやりと冷たかった。驚いて手を放すと、手に血は付いておらず、足は赤くなっていたものの外傷はなかった。だが撃たれた個所の感覚はなくなり、針で突き刺されたように痛かった。
春日は容赦なく発砲を続ける。幸は何とか避けようと動いたがそのうち数発が当たった。しかし当たったどの部位も血は出ず、突き刺さるような痛みを感じるだけだった。
そのうち幸の身体が震え始めた。自分でも何故震えているのか分からなかった。ただ急に体温が下がってしまった気がした。ふと服に触れると、スプリンクラーで濡れてしまった部分が凍り付いていた。
(あの銃は冷気を放っている・・・!?)
そう考えれば血が出ない事、冷たい事、麻痺する事、突き刺すような痛み全てに説明がつく。
しかしその事が分かった時点ですでに幸は寒さと痛みでうまく動けなくなっていた。
一方の直斗も素手と棍との戦いに苦戦していた。時々かわせずに前腕で受け止めたために腕が痺れてきていた。リーチも相手の方が長いため上手く反撃出来ずにいる。
直斗の背中が壁に当たった。朝倉が突きを繰り出す。すぐさま横へ逃れたため棍は壁に当たった。しかし棍先には消火器のスイッチがあり、スプリンクラーが作動し一面に水が降りかかった。
「朝倉ぁ! 何やってんのよ! これじゃ
春日が朝倉に向かって叫んだ。思わず朝倉は振り返ってしまい、その隙に直斗は棍を奪った。幸も床に出来た水溜りに蓄電池から電気を流し春日を感電させた。ただ水の抵抗が強かったため、気絶させるほどの威力は出なかった。
「春日君こそどうしてくれるんですか、この状況!」
2人が睨み合っている隙に幸と直斗はエレベーターへと近付こうとしたが、再三邪魔が入った。
「よくもオレ達をコケにしてくれたな。」
古賀が飯怩担いで追いついてきた。飯怩ヘ意識を取り戻しているものの、まだ身体が麻痺しているようだった。
「でも、この状態じゃあ逃げる方がいいんじゃないか?」
血が上っている古賀を抑え、飯怩ヘ筒状のものを取出し、栓を抜いて床に転がした。筒から勢いよく煙幕が吹き出し、辺りが見えなくなった。そして煙が晴れた時には4人はエレベーターで地上へと逃げてしまっていた。