「やばい! こっちに来た。」
辺りを見回して、幸は直斗を近くの部屋の中へと連れ込んだ。部屋の扉が閉まると同時に4人組は角を曲がり、幸達に気付かず行ってしまった。
「今のは・・・盗賊?」
「多分、あの人達はトレジャーハンターって言うんだろうけど。」
幸が直斗の顔を窺うと、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「史料を手に入れるためには遺跡を壊さなければならない事もあるけど、あんな人達に壊されるのは気に食わないな・・・。」
幸も同感だった。しかも史料を手に入れる技術を悪用しようとする事が許せなかった。彼らの手に史料が渡ったら、どんな所に売り飛ばされるか分かったものではない。
「とにかくトレジャーハントは急いだ方がいいな。」
直斗がドアノブに手をかけて扉を開けようとした。しかしドアノブは途中までしか回らない。
「あれ?」
ドアノブを回したまま押したり引いたりするが、何かが引っかかって扉が開かない。
「この扉、もしかしてオートロック・・・!?」
ドアを見てみると鍵穴はあるものの、肝心の鍵を開けるつまみがない。
「え、オートロックって鍵が勝手に閉まっちゃうやつですか!?」
直斗の言葉を聞いて、幸は青ざめた。
「すみません! 私が迂闊に行動したために!」
「いやいや、謝らなくていいよ! 部屋の中に隠れなかったら何が起きてたか分からなかったし。」
「すぐ開ける方法を見つけるので、待っていて下さい。」
「え?」
戸惑う直斗をよそに幸は部屋を見回した。正面の壁には幾つかのモニターが埋め込まれており、その下のテーブルにはよく分からない機材が置かれている。他にもマイクやスピーカーもある、
「何か、こういうのを見ると、この遺跡を占拠したみたいだなぁ・・・。」
昔読んだ小説に、モニタールームを乗っ取りその施設を監視する話があったのをふと思い出した。
幸はモニター下の機械をいじり始めた。機械に触れた事なんてほとんどなかったが、直感的にどうすればいいのか分かった。機械の電源スイッチを押してみると機械が動き出した。そして幾つかのスイッチを押すと鍵の外れる音がした。
「直斗さん、外れました?」
直斗がドアノブを回すと最後まで回り、扉が開いた。
「開いたよ! 幸、機械に詳しいの?」
幸は軽く首を振る。その様子に直斗は驚いた。
「ええ!? じゃあどうやって・・・。」
「何となく・・・です。」
そう答えると直斗は口を開けたまま、じっと幸を見つめた。
「『何となく』で開けられるって・・・、幸って一体何者なんだい?」
「考古学者、兼トレジャーハンターです。」
幸のあまりに真面目な答えに直斗は吹き出してしまった。
「あはは、これはまいったな。」
笑われた事に少し恥ずかしさを感じながら幸は直斗と部屋を出た。