「・・・あなた達に史料を渡す。だから扉を開けてくれ。」
 その言葉を聞いた朝倉は笑みを浮かべ、そっと扉を開いた。
 その隙を狙い、直斗は幸のヘッドライトを最大限にまで光らせた。
「うわっ! 彼らを捕まえろ!!
 しかし扉が開くと同時に部屋から大量の霧があふれ出てきた。
「何だ!? 霧が出てきたぞ!?
 相手が混乱している間に幸と直斗は霧に紛れて部屋から脱出した。
「ちっ、スプリンクラーだ。」
 目が一時的に見えなくなった朝倉の代わりに小柄な男性が部屋を覗いた。部屋の中では細かい雨が降っていて、それが熱によって蒸発し、霧へと変化していた。
「地下水が豊富なこの国じゃあ、スプリンクラーがあって当然か。」
 小柄な男性が嘲笑した。
「飯怐I 奴らを追うぞ! 春日は朝倉と行動しろ。」
 古賀が最初に走り出し、その後を飯怩ニ呼ばれた男性が追いかけていく。
「幸、これからどうする? 追われてちゃハントなんて出来ないし、一旦遺跡から出ないか?」
 霧が晴れた先で幸と直斗はエレベーターのある方へ向かって走っていた。
「一先ずそうした方がいいですよね。」
 後ろを確認すると古賀と飯怩ェ追いかけてきていた。彼らの足の速さはこちらより上だ。
「! 行き止まりだ!!
 左手に部屋があるものの、そこに隠れた所で袋の鼠である事に変わりはない。
「さて、痛い目見たくねーなら、それを渡しな。」
 古賀は木槌を構え、飯怩ヘナイフを取り出した。
 幸は史料をウエストポーチにしまおうとしたが、その時自分が持っている物が何であるかに気付いた。
「渡す気は、ないか。」
 飯怩ェ幸に切りかかる。それを合図に古賀も直斗に向けて木槌を振るう。幸が右へ避けると飯怩ヘ体制を変えずにナイフを投げた。とっさにしゃがんでそのまま足払いを繰り出したが、飯怩ヘタイミングよく跳んでそれを避けた。
 直斗は古賀が振るう木槌の軌道を逸らして隙を作ろうとするが、すぐに軌道修正されてしまう。そのため前腕に一撃を入れ、手を緩めようとしたが相手はびくともしない。古賀はそのまま木槌を振るって直斗を押し飛ばした。
「ぐ・・・」
 倒れた直斗を古賀が足で踏みつけ、身動きを取れないようにした。
 それに幸は一瞬気を取られ、飯怩ノ首元に刃を突き付けられてしまった。
「俺達の勝ちだな。」
 飯怩ェ幸の持っている箱のようなものを手に取ろうとした。幸は渡すように見せかけて箱の1面についている2つの突起を飯怩フ掌に押し付けた。その瞬間バチィッと音がし、飯怩ェ気を失って倒れこんだ。
「飯!?
 古賀の意識が飯怩ノ向いた瞬間、直斗は古賀の足首を殴ってよろめかせ、立ち上がって鳩尾にもう1発食らわせた。
「ぐっ・・・!」
 そして幸と直斗は再びエレベーターに向かって走り出した。
「幸! 一体何をやったんだ!?
 2人から十分距離を取った時点で直斗が話しかけた。
「これ、小型の蓄電器です。電気が中に残っていたので、相手の体内に放電して気絶させました。」
 幸が蓄電池を持った手をひらひらと振る。直斗は幸の言った言葉が信じられなかった。
(普通に触れただけじゃ、電気は流れないはずじゃ・・・。本当に幸って一体・・・。)

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