扉の向こうには大量の書物があった。そしてそこには1人の男性が立っていた。男性はドアノブが回る音に気付いて振り返り、警戒態勢に入った。しかし開かれた扉の向こうから現れたのは小柄な少女だった為にすぐに緊張が解かれた。
幸の方も人がいる事に気付き警戒したが、その警戒はすぐに解けてしまった。平均よりも高めの身長、赤みがかった茶色の髪、そして人を疑う事が苦手そうな顔・・・。部屋の中に立っていた男性はエント遺跡で出会った人物だった。
「君は・・・確かエント遺跡で・・・?」
「あっ、あなたはもしかして、U.N.さんですかっ!?」
興奮を抑えられず、男性が話し終える前に話しかける。
「『U.N.さん』?」
幸の問いかけに男性は思わず困った笑みを浮かべる。
「あっ! あの、エイス遺跡やエント遺跡などで遺跡を荒さないでほしいって置手紙をしたのはあなたですか?」
男性の返事で説明不足だった事に気付き、少々恥ずかしさを感じながら言い足した。すると男性は納得がいったような顔をした。
「ああ! うん、そうだよ。僕は上田直斗っていうんだ。」
幸は感激して思わず直斗の手を掴んだ。
「うわあぁ、会いたかったんです! 世の中にまだ昔のままのトレジャーハンターがいたって知ってすっごく嬉しかったんです! やっと会えました――!!」
満面の笑みで1人叫びまくる。
「えーっと・・・君ももしかしてトレジャーハンターなの? 遺跡調査補助の・・・?」
「はい! 私は秋山幸といいます。」
「秋山・・・幸・・・?」
一瞬直斗の表情が固まったような気がした。しかし幸がそれを意識する前に、突然何かを叩く音が建物全体に響き渡り、そちらに意識が向いた。
「何!? 今の音・・・。」
幸が扉から出て音のした方を確認すると、土煙がこちらに漂ってきた。続いて直斗が廊下に顔を出した時に再び音が響き渡った。その後も規則的に叩く音が響いてくる。
「何かを壊そうとしている・・・!?」
直斗はそう呟いて部屋を飛び出していった。取り残されそうになり、幸も慌てて追いかける。音の出所の近くまで来ると、角からそっと様子を窺った。道の先には3人の男性と1人の女性が立っていて、4人の目の前の扉には穴が開いていた。
「・・・ったく、何でフロンティアの建物ってこんなに頑丈なんだぁ? 今の建物の方がよっぽど壊しやすいぜ。」
体格のいい男性が手に持った木槌を肩に担ぐ。
「セキュリティもフロンティアの方が断然高いですよね。折角の僕の技術も通用しません。」
木槌の男性の陰に隠れている長身の男性が鞄の中に何かの道具を仕舞い込んだ。
「開けられないなら最初から壊せばいいじゃない。埃が出るのはイヤだけど、こっちの方が手っ取り早いし。」
長身の女性が口にハンカチを当てながら話す。
「シャナ国のセキュリティは年々レベルが上がっています。そして多くはフロンティアの技術を参考にしているんです。例え開けられなかったとしても仕組みをある程度知る事は大事なんですよ。そうすれば建物に侵入するとき、その知識を利用して新たなロックを解除する事が出来るようになったりするんですから。」
長身の男性は女性に反論した。その間に小柄な男性が穴から部屋の中に入っていった。
「別に今の建物って壊れやすい所多いし、んな技術あってもなくても変わんねーだろ。」
小柄な男性に続いて入ろうとした木槌の男性が足を止め、女性を弁護した。
「全く単細胞ですね、古賀君は。建物を破壊して侵入しようとすれば先程のように音が響くじゃないですか。そうしたらすぐ誰かに気付かれてしまいます。しかし、何処も破壊せず静かに侵入してしまえば、ばれる危険性はかなり減ります。こういうのは手っ取り早くした結果、手っ取り早く捕まってしまうものですよ?」
長身の男性が呆れて古賀という男性に言い放つ。
「ははっ。じゃあ手っ取り早くお金を稼ぐ俺達は、手っ取り早く制裁を食らわされるんだろうな、朝倉よ。」
部屋の中に入っていた小柄な男性が長身の男性を嘲笑した。女性が視線を送ると小柄な男性は首を横に振った。
「じゃあ、次行くよ。」
そういって4人は幸達がいる方へと歩いてきた。