ようやく身体がスッキリして目が覚めると、日はすっかり昇りきってしまっていた。部屋の時計を見ると12時を過ぎていて、思わず飛び起きた。
鞄の中に閉まっていた予備の服に着替え終わった時、家の中に誰かが居る気配がない事に気が付いた。部屋を出てリビングやキッチンなどを覗いていくが誰も居ない。幸は急に胸が苦しくなって、思わず家を飛び出した。
辺りを見回すと、大地がこちらに向かって歩いてくるのが見え、幸は大地の元へ駆け寄った。
「おわ、秋山! 昨日ぶっ倒れといて今日走るとか何考えてんねん。」
大地は手に提げた袋を守るように幸の突進をかわす。
「京一や家族を知らない?」
幸の不安そうな顔に大地は首を傾げる。
「おばちゃんは仕事で平治は中学校やろ。京一は・・・、墓か?」
大地は辺りを見回し、京一が帰ってくる気配がない事を確認して歩き出す。幸はどうするか悩んだが後をついていく事にした。
しばらく歩いていると墓地が見えてきた。大地は迷いなく墓地の中を歩いていく。やがて幸にも京一の姿が見えた。
2人の足音に気付いて京一が顔を上げた。
「秋山はん、寝てませんといけませんえ?」
「都宮こそ、病人ほっぽってどっか行ったら不安になるやろ。」
「すいません、よう寝たはったので。」
大地はため息をついて、手に提げていた袋から料理の入ったパックを取り出す。
「オカンからお裾分け。悪いけどこれ供えさせてもらうな。おっちゃん、美花、いっつも京一引きずり回してすまんな。今度はちゃんとお供えと花持ってきたるから。」
そう言って墓の前に料理を置いてお祈りをする。
幸は墓に刻まれた名前と年月日を見た。名前には男性と女性の名前が2つ刻まれていて、没日が1年程しか違わなかった。
「・・・・・・わての父と妹のお墓です。」
幸が墓石を見ている事に気付いた京一が静かに呟く。幸は気まずくなってあわてて墓にお祈りを捧げた。
「秋山はん、ほったらかしてすいません。お腹空いてますやろ。早よう帰りましょうか。」
京一は幸のお祈りを見届けてから、家路へと向かう。大地も供えた料理を袋に入れ直して後をついていく。
「・・・大地、京一に悪い事をしちゃったかな・・・?」
幸は京一に聞こえないよう小さな声で大地に尋ねる。大地は特に深く考えず「そうやと言ったらそうやし、違うと言ったら違うな。」と答えた。
大地は歩くスピードを落とし、少し京一との距離を空ける。
「京一のオトンと妹な、病気で死んでん。特に、妹の病気は金さえありゃ治るもんやったから、病人見ると自分の不甲斐なさとか思い出して不安定になるんや。
秋山は別に友達やないけど、でも知っとる人が死ぬなんて考えたないやん。やから早よ身体治せや。」
そして大地は京一に追い付く為早足になった。幸はあわててついていき、その背中に「ごめん。」と謝った。