やがて畑があちこちに見えるようになり、村に近付いてきた事が解った。
 するとずっと無言だった大地が口を開いた。
「都宮んちに連れてくんでええか?」
「はい。坂本はんちは賑やかですからね。」
「ホンマに・・・。女連れ帰ったら何言われるやら・・・。」
「ま、それはわても同じでしょうけど。」
 2人は軽口を叩きあいながら歩を進めていく。やがてある家の前で立ち止まると、大地は「田崎はん呼んでくる。」と1人別の道へ走っていった。
「ここがうちです。歩けます?」
 京一が手を差し出したので幸は掴んで立ち上がった。しかし足元はおぼつかず、京一に支えられながら家の中に入った。
「ただいま。」
 京一は誰も居ないだろうと予想して小さな声で挨拶をしたが、奥からひょっこりと幸より少し年下の少年が顔を出した。
「京兄お帰り。・・・え? 誰?」
 京一の弟は幸に気付くとキョトンとした顔になった。
「知り合い。熱出したはるからお布団出してくれます?」
 すると弟はそれ以上は何も聞かずに別の部屋に入っていった。
「弟の平治です。上がり。」
 京一に進められ部屋に入ると平治がテキパキと布団を敷いていた。
「お客さん用のお布団ないから、京兄のお布団使わしてな。」
「ええよ。カバーはちゃんと洗ったのん使こうてますから。」
 話の後半は幸に向けて京一が言う。
「坂本はんがお医者さん呼びに行ってますんで、その間体温計っといて下さい。」
 京一は幸を布団に寝かすと、温度計を差し出して平治を連れて部屋を出ていった。
「・・・一応大地と京一とは和解しているけれども、こう甲斐甲斐しくされると何か変な感じ。」
 幸は体温計を脇に挟むと、2人と出会った時の事をぼんやりと思い出す。初めて会った時はトレジャーハンターという事で嫌悪され、二度目に会った時に仕事について語ると理解を示してはくれたが、気を許してくれた感じはしなかった。その為幸を村まで連れていってくれただけでなく、こうして家に上がらせて貰えるとは思わなかった。
「あ・・・、でも台車に乗せてくれている時、京一は結構イライラしていたような・・・?」
 口振りは心配してくれていたものの、言葉の端々にトゲが感じられた。
「・・・医者に見てもらったら、さっさと出ていこう。」
 もしかしたら看病したくないけれども放置も出来ないジレンマにイライラしているのかもしれないと思い、幸はすぐ出ていけるよう荷物を整えた。

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