着替え終わって少しすると部屋の扉がノックされた。幸は顔を出すと京一が「ご飯、おだいどことこっちとどっちで食べます?」と聞いてきた。幸は「台所で。」と答えた。
 京一の後に続いてダイニングに向かうと、平治と母親とおぼしき女性が台所で食器を出していた。
「突然お邪魔してすみません。」
 幸は女性に声をかけると、「いいのいいの。」と笑い返した。
「初めまして、京一と平治の母です。京一がお世話になって・・・・・・、おります?」
 母親は京一の雰囲気から仲良しではなさそうな気配を察し、京一に問いかける。
「まぁ・・・・・・・・・、なりましたね。」
 すると京一は少しの沈黙の後に返事をした。
「ふふ、この子は素直やないんで、色々ご迷惑かけてましたらすいません。今回もきっと無理矢理連れてこられましたよね?」
 母親が申し訳なさそうに頭を下げると、幸はあわてて「大丈夫です。」と返事をした。
「お母さん、病人に長々立たしとかんと、ご飯にしましょ。」
 京一は無理矢理幸を母親から引き離し、椅子に座らせた。そして目の前に平治が1人用の土鍋を置いた。
「お医者さんが栄養あるものって言ってたんで、雑炊に色々お野菜混ぜてんけど、嫌いなもんある?」
 平治が蓋を開けると、辺りに出汁のいい香りが広がった。
「ううん。ありがとう。」
 幸はレンゲで雑炊を掬い、よく吹き冷ましてから口に入れた。出汁のいい香りが口いっぱいに広がった後、じんわりと野菜の甘味が感じられた。
「おいしい。」
 幸がそう言うと平治は「そらよかった。」と笑った。
「おかわりもあるから、いっぱい食べ。」
 そしてテーブルの真ん中に大鍋をドンと置いた。
「ちょお作り過ぎ違います?」
 それを見た京一は苦笑する。
「久々に4人前作ったら加減誤ってもうたわ。京兄もいっぱい食べてな。」
 そう言って平治達もそれぞれのお碗に雑炊を入れていく。
「・・・うん、平治もお料理上手くなりましたね。」
 一口食べた京一が笑う。
「京兄しばらくは家居るんやろ? 色々作ったるわ。」
 その言葉に平治も嬉しそうに拳を握った。
「作るんはええけど、美味しいのん作ってよ?」
 母親が呆れて言うと、京一は「何しましたん?」と平治に聞き、平治は目を泳がせた。
「それより京兄は秋山さんとどないして知り合ったん?」
 すると京一もその話はしたくなかったのか、平治の言葉を無視して母親に「何しましたん?」と聞き直した。
 幸はそのやり取りが面白くて思わず笑ってしまった。
 それから風呂も貸して貰い、幸は再び布団の中に入った。散々寝た後だから眠れないかと思ったが、気付けば深い眠りについていた。

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