ふと身体が揺れている感覚がして、幸は意識を取り戻した。目を開けようとして、しかし身体が小刻みに揺れ続けている事に疑問を抱いた。さらに身体が何かに挟まれていて上手く身動きが出来ない。それで先程居た岩場ではない事に気付き、警戒して恐る恐る薄目を開けた。
「あ、気付かはった。」
すると幸の目の前に男性の顔があり、驚いて目を見開いた。しかし急に目を開いたせいで眩しくて再び目を瞑ってしまう。徐々に光に目を慣らしていくと、目の前に今度は水筒が差し出されていた。
「飲めます?」
幸は水筒越しに男性の顔を確認する。どこか涼しげな印象のするその顔には見覚えがあった。
「京一・・・?」
幸の声を聞くと「一先ず大丈夫そうやね。」とため息をついた。
そして幸は段ボールと一緒に台車に乗せられている事に気が付いた。後ろを振り返ると、大地が台車を引っ張っている姿が見えた。
「自分何処に居ったか覚えたはる?」
「岩の側。・・・ギーグに向かおうとしていた所。」
次の石版があるフィアス遺跡へと向かう道程に、以前砂漠で倒れていた所を助けて貰った牧原榎菜が働いている街があるので、榎菜の元を訪れようと歩いていた所だった。
そして現在、榎菜と出会った時と同じ様に倒れていた所を拾われて乗せてもらっている共通点に気付き、思わず笑いが込み上げてきた。
「何笑ろてますん? あんさん、わてらが見つけんかったらどないなってたか解ってます?」
京一はイライラした口調で水筒を幸の頬にぐりぐりと押し当てる。
「ご、ごめん・・・。」
京一の怒気に咄嗟に謝り、押し当ててくる水筒を受け取る。
「わてらはスタック村に帰る所です。一旦そこに連れていきますんで。」
そう言って京一は台車を押すのに専念し始めた。幸は申し訳なくなり、無言で水筒の中の水を飲んだ。