ダウジングをして、がむしゃらに走ってきた道を思い出しながら戻っていく。ついでにあちこちある部屋を覗いていくが、先程と同じような何かが朽ちた跡がある棚が並ぶ以外何も見つからない。
「・・・何か地下にしても寒いような・・・。」
 幸は耐えられなくなり身震いする。
「確かに、地上に比べて大分寒いかも。」
 琳が幸の独り言に答える。琳と鏐飛は長袖の服を着ているので、それほど寒そうではない。
 幸は折り曲げていたグローブの裾を肘近くまで伸ばした。
「えっ、其の手袋そんなに長いの!? てっきり手首までかと・・・。」
 鏐飛が驚いて幸のグローブを覗きこむ。
「夜に冷え込んだ時用に上着を持つのは荷物になっちゃうから、代わりにグローブの裾が長い物を選んだの。そうしたらこういった時に便利だから。」
「確かに、初めて夜を過ごした時は余りの寒さにビックリしたよ。」
 鏐飛は大きく頷いた。
「初めて?」
 幸は鏐飛の言葉に引っ掛かり聞き返す。
「ああ、初めて砂漠で夜を過ごした時ね!」
 何故か琳が鏐飛の頭を押さえつけて、くいぎみに答える。
「? ・・・そうだね、砂漠って風を遮るものがないから、町中よりずっと気温が下がりやすいもんね。」
 琳の様子には疑問が残りつつもその言葉に理解して頷く。
「でも何で此処はこんなに寒いんだろうね?」
「棚の状態からみてここは食料品などの保管庫のようだから、もしかしたら意図的に冷やされてるのかも?」
「意図的なんて出来るの?」
「後期の遺跡なら冷却機があるんだけれど、ここは初期のものだから考えられるとしたら・・・。」
 その時ちょうど幸が思い浮かべていたものが目に入ってきた。
「床の下に水が溜まってる!?
 琳と鏐飛は驚いて床を覗きこんだ。
 3人の前にある床が崩れ落ちていて、そこには並々と水が湛えられてた。幸がその水に手を浸すと、しびれるほど冷たく、一方向に流れていた。
「やっぱり。この下には地下水脈があって、冷たい水が流れる事で部屋の熱気を奪っているんだ。」
「地上は荒野なのに地下にはこんなに水が流れてるんだ・・・。」
 2人はまじまじと床下を覗く。しかしもう一歩近付こうとした時床がさらに崩れた。崩れた床は水の底に沈んでいったが、結構深いようで底につく前に見えなくなってしまった。
「しかし、こんな道は通った訳がないし、どこで道を間違えたんだろう・・・。引き返えさないと。」
 そう言って振り返った時、遠方から足音が聞こえてきた。
「誰か来た?」
 視線の先に2人の男性とおぼしき人影が確認できた。顔はよく見えないが、服装からするとここで雇われている考古学者ではなさそうだ。そしてある事に気が付く。
「腕章をしていない!?
 つまり無断浸入の盗賊だ。
 次第に互いの距離が縮まっていく。もしこの2人が先程琳と鏐飛と揉めた人物でなければ、何事もなくすれ違えるかもしれない。しかし、願いむなしく2人が琳と鏐飛を認識すると血相を変えてこちらに向かってきた。
「っ! お前ら、さっきはよくも!」
「わわわ! ヤバ、鏐飛、跳ぶよ。」
「え!?
 すると琳が僅かな助走もつけず4メートルはありそうな水を湛える大穴を跳び越える。
「えええっ!?
 続けて鏐飛も跳び越えた。
「幸も早く!」
 琳に急かされるが、さすがに助走なしには無理だ。しかし後ろを振り返るともう盗賊が目と鼻の先まで近付いてきていた。
(『力』を使えば何とかなるか・・・!?
 覚悟を決めて全身に力を入れる。そして力強く床を蹴り出した。その瞬間、立っていた床が負荷に堪えられず崩れ落ちたが、無事に対岸に降り立つことが出来た。一方の盗賊は床が崩れた事に怯み、足が止まった。その隙に幸達は盗賊から逃げる事に成功した。

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