前の町を出立してから数日、荒野続きだった道に突然急ごしらえで作られた雰囲気の建物が数件現れた。
 手元の地図に目を落とすと手書きで遺跡の名前が書かれていた。
「もしかして、ここが新しく発掘されたガフィート遺跡?」
 それは数週間前に新聞で大規模な発掘作業が行われていると知り、最新でない地図にメモ書きしたものであった。
「遺跡の中に入れないかな?」
 期待に胸を膨らませ、建物の建つ方へ進路を変えた。
 近付くにつれ、建物によって隠れていたその先が見えてきた。数十メートルに渡り足元に崖が広がっている。建物の元に辿り着く頃にはその崖の下に遺跡が広がっているのが見えた。
「わ、大きい。」
 クレーン車が土砂を運び出していて発掘途中ではあるが、それでも既に見えているだけでも家が50件は建ちそうな広さだ。
 幸は研究所とおぼしき建物を探し、遺跡に入れないか交渉してみる事にした。

「すみません、こちらの遺跡をトレジャーハントか見学出来ないでしょうか?」
 入って一番近くの机に座っていた男性に話しかける。
「えっ? トレジャーハンター!?
 男性は驚いて幸を上から下までまじまじと見つめ、少し考えた後書類を引っ張り出した。
「じゃあこの書類のココとココと書いて。ハント終了後は収穫がなくても必ず報告に来る事。・・・まぁ、研究所に来る時点でトンズラかく事はないか。」
 男性は独り言のように呟いた。盗賊紛いのトレジャーハンターは無断で遺跡に侵入し盗掘するので、実力はさておききちんと手続きを踏みに来た幸を信用してくれたようだ。
 必要事項を書き始めると横から男性が覗き込んでくる。
「あ、15歳なんだ。ふーん、若い人は歓迎だけど、さっきの子達も16だったし、どんどん低年齢化してんだなー。」
 男性は独り言として呟いていたが、顔が近い為はっきりと聞こえた。
「他にもトレジャーハンターが来てるんですね。」
「え? ・・・あ、ああ。今研究所を通して遺跡内に入ってるのは16歳の男女2人組だけだ。もし、それ以外の人がハントをしていたら報告よろしく。あ、この腕章が目印ね。」
 独り言を幸に聞かれていた事に気付かなかった男性は反応に遅れた後、青い腕章を幸に渡した。
「色が違っても遺跡関係者は皆腕章をしてるから。あとこれ、調査済みの所まで作った地図。ここに載ってない範囲をハントしてくれたら助かる。」
「わかりました。ありがとうございます。」
 腕章を腕に着け、幸は遺跡に向かった。

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