しばらく進んで行くと、大広間に出た。そこには散乱した長机と同じ長さの椅子、そして壁には大きなレリーフや絵画があしらわれ、その下に祭壇と思われるものがあった。
「すっごい! 何コレ!?」
鏐飛が興奮して祭壇に走り寄る。
「鏐飛、危ないよ!」
続けて琳、幸も広間へ入った。
壁を見上げると、6人の男女の神々のレリーフが絵画の上で踊っているようだ。その時、光の神とおぼしき男性の像の手が光ったように見えた。
「何だろう?」
幸がヘッドライトを像の手に向けると、何かに反射してキラキラと光った。
「よし、見て来よ。」
すると鏐飛が壁面を登りはじめた。
「え! ちょっと、鏐飛!?」
琳と幸は驚いて、慌てて鏐飛の元へ駆け寄る。
「危ないよ! レリーフも欠けるかもしれないし!」
「平気平気!」
鏐飛は2人の慌てぶりを気にも止めず、スイスイと登っていく。あっという間に光った場所まで登ると、男性像の手を確認した。
「何だ、普通の鏡か。」
フロンティアのマークなど細工がないか確認するが、何の変哲もない鏡だと解るとと落胆した声を出した。
「もう! 降りてきなさい!」
琳が痺れを切らし、声を荒げる。その声を聞いて鏐飛は急いで壁から降りた。
「大丈夫なんだからいいじゃん。」
鏐飛が反抗する声をあげると、更に琳が注意しようと口を開けようとした。すると突然何かが落ちる音が聞こえ、3人の肩が跳ね上がる。
「なっ・・・何!?」
音のした方を向くと水の女神と思わしき像の腕から水が流れ落ちている。
「ちょっ・・・、鏐飛、貴方まさか壊した!?」
「いやいやいやいや、あの像には触ってないよ!?」
琳と鏐飛はパニックになり、お互いあれこれと言い合い始める。その間に像から流れ出ていた水は量を減らし、すぐに止まってしまった。
「な・・・、何だ、止まったじゃん。」
鏐飛が少し安心した声をあげると、今度はどこからか風が吹いてきて、鏐飛は跳び上がった。
「ううう嘘だろ!? ここ地下だよな!?」
その時幸にある考えが過る。
「もしかして、このレリーフにはからくりが仕込まれているのかも。」
声に出すと同時に今度は火の神の像の手の上に火が灯る。
「そうだ、それぞれの神に対応したエレメントが何かをきっかけに出てくるように仕込まれているんだ。」
幸が目を輝かせて像を見つめる。
次に地の神の像から砂が流れ落ちたが、残りの闇の女神の像は何も起きず、また他の像もこれ以上の変化は起きなかった。
「うーん、闇の女神は元々ここが暗くなっちゃっているから視認出来なかったのかな?」
何も起きなかった事に幸は少し寂しそうな声をあげる。
「けどこれ、何百年も前に造られたんだろ? 動くだけスッゲーじゃん!」
最初は呆然としていた鏐飛もじわじわと技術の高さを実感し、興奮し始めた。
「本当ね、一体どうなってるのかしら?」
琳は近付いてレリーフを見上げようとしたが、その時壁の角に人1人が屈んで潜れるサイズの穴を見つけた。
「ねえ、盗賊が言ってた入口って此れかな?」
琳の声かけに鏐飛が近付いて一緒に覗き込む。
「穴を潜るなんて言ってなかったし、違うんじゃない?」
鏐飛が部屋を見回すと、3人が入ってきた入口以外にもう1つ入口がある。
「何だろう・・・?」
琳が穴の中に頭を入れる。すると中は小部屋になっていて、大きな箱が置かれていた。
「何か箱があるよ。」
そう言って琳が中に入った。幸と鏐飛も続いて入ったが、3人とも中に入ると多少身動ぎが出来る程度の広さしかなかった。
「鍵が閉まってるや。」
鏐飛が箱の蓋を開けようとしたが動かない。
箱を見ると盗賊達が破壊を試みたようで傷だらけになっている。入ってきた穴も広げようと叩いた後が残っている。
「此れって開けれないのかな?」
琳が試しにと針金を取り出して鍵穴に差し込む。しばらく弄くっていくとカチャリと鍵が外れる音がした。
「やった! 開いた!」
箱の蓋は意外に重く、3人でゆっくりと持ち上げる。すると中には変色した布が入っていた。
「何の布?」
鏐飛が持ち上げると、それは服の形をしていた。
「これはもしかして、祭事に使う衣装かもしれない。」
幸も箱の中に手を入れ、慎重に布を広げていく。そこには何着もの様々なデザインの服が仕舞われていた。
「すごい、こんなに沢山の衣装が保管されているなんて、史料としては充分な価値だよ。盗難防止に狭い入口にされていたのが幸いしたね。」
幸は服がこれ以上傷まないようにそっと箱の中に戻す。
「劣化が激しいから、箱か何かに入れて持って行かないと破けちゃうかもしれない。一旦仕舞っておいて、盗賊の抜け穴の報告と一緒にこれも報告しようか。」
「じゃあ、また鍵をかけた方がいいよね?」
そう言って琳は先程よりも手早く鍵をかけた。
「・・・すごいなぁ。こうもいともたやすく鍵を明け閉め出来るなんて。」
幸が感嘆の声を上げると琳は「そんな事ないよ。」と謙遜した。
「あたしたちも必要な知識が全然足りてないし、もっと勉強しなくちゃね、鏐飛。」
「そうだな。ダウジングは無理でも、地図を作ったりとかそういうのは真似してかないと。」
鏐飛も大きく頷く。
「そんでゆくゆくは全遺跡の制覇だ!」
「それは無理でしょ。」
鏐飛が握り拳を高く上げるが琳にバッサリと否定された。
そして、誰からともなく笑いあった。
小部屋から出て再び出口へ向かう。やがて人為的に壊された穴が見つかり、そこから地上に出た。そこは発掘現場からは見えない距離にあり、考古学者達に報告する事になった。
穴や違反者の報告、また大広間と衣装が隠された小部屋への道順を報告すると、学者達が慌てて採掘準備を始めた。
「おれの晩飯代がいい投資になったや。」
鏐飛が嬉しそうにその準備を眺める。
「調子に乗らない。」
それを見た琳が軽く頭を叩くと、鏐飛は不満そうに見つめ返す。
「これからが忙しくなるから、きっちり仕事をしないとね。」
幸が考古学者を手伝って荷物を運ぶ。
「よし、もうひと頑張りいきますか!」
鏐飛と琳は気を引き閉め、再び遺跡に向かった。