「・・・はぁー、アイツらしつこーいぃ。」
 どのくらい走ったかわからなくなるまで走った末、琳が心底嫌そうにため息をついて立ち止まった。
「本当だよ。しかもますます何処に居るか判らなくなったじゃないか!」
 鏐飛が苛立たしげに言う。
「戻れたとして、さっきの大穴をまた跳び越える事が出来るのかなぁ・・・?」
 幸は思わず不安を口にした。
「まぁ、それは何とかなるんじゃない? 最悪泳げば行ける行ける。」
 すると気楽に鏐飛が返してきた。
(さっきの穴といい、落ちてきた時といい、運動能力がすごいなぁ・・・。)
 幸は思わず感嘆のため息をついた。ふとその時、以前にも同じ感想を抱いた事を思い出した。
(あ、そういえば鈴音もあり得ない大岩を跳び越えていたなぁ。・・・あれ? もしかして私の運動能力が足りてないだけ?)
 何人も超人的な能力を見てきたせいか、自分が平均より劣っているのではないかと不安になってきた。
(このハントが終わったら、筋トレでもしようかな・・・?)
 幸は密かに決意して、再び歩き始めた。
 しかしハントについて考えた時にふと、ある事に気が付く。
「あれ・・・? そういえば何であの盗賊達は遺跡の中に入る事が出来たんだろう?」
「普通に入口からじゃないの?」
 鏐飛が不思議そうな顔で聞き返す。
「私が入口から入った時、何人もの考古学者達とすれ違って挨拶をしたの。普通その時に腕章がない事に気付かない?」
「本当だ! おれ達も何人か会ったよ。あの人数に気付かれずに入ってくるなんて無理だよ。」
「・・・もしかして、あたし達が入ってきた入口以外に、他にも入れる場所があるのかも?」
 琳の発言にハッとなる。
「その可能性は充分ありそう。もしかしたら最悪、盗賊グループで勝手に穴を掘って入口を作っちゃった可能性もあり得るね。その事も報告しないと。」
 そして再び出口へ向かう為にダウジングを開始した。
 そうして歩き始めてみるとようやく見た事のある道に出たが、
「あれ? ここって穴を飛び越える前の道に似てなくね?」
 鏐飛が立ち止まったその道は最初に琳と鏐飛に追い立てられる形で走り出した時に通ったと思われる道だった。
「確かに・・・。ちょっと待っていて、ダウジングをしてみる。」
 幸は水晶を取り出して、この通路を通ったかどうかを念じてみた。すると水晶が縦に揺れた。
「! どうやらさっきの水が流れていた道以外にも、道が繋がってたようだね。」
 それならばあの大穴を跳び越える必要もなく、上へ戻る道を探す事が出来る。幸は意識を集中し、自分が降りてきた穴の場所までのダウジングを開始した。
「幸って凄いね。あたしもダウジング出来たらこんなに迷う事なかったのに・・・。」
 幸の水晶の動きを見て、琳が感心する。
 そしてようやく幸が降りてきた穴まで戻る事が出来た。
「そういや2人はどうやって上っているの?」
 途中から縄ばしごがなくなっているので、幸のように鉤づめをくくりつけたロープ等を使っているのだろうかと思い尋ねる。
「どうって・・・。」
 鏐飛が琳に目配せをし、指を組んで腰を落とす。琳が助走をつけて鏐飛に向かって跳ぶ。そして鏐飛の手を踏み台にして上の階に飛び上がった。続けて鏐飛も跳躍し、琳の伸ばした手に掴まって身体を引き上げた。
「こんな感じ。」
「すごい、この高さを軽々と・・・。」
 2人ともそれほど身長が高くないのに3メートルもある高さを難なく上ってみせた。
「幸はどうする?」
 鏐飛が足場になろうかと下りようとするのを止め、穴から離れるよう伝える。鉤づめのついたロープを投げて引っかけると、腕の力だけで上った。
「幸も凄い! なかなか難しいよ、ロープを上るなんて。」
「ありがとう。」
 ロープを片付け、幸は道順を書いたメモを取り出して歩き始めた。

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