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 そこから先はかなり遺跡が脆くなっていて、あちこち壁が崩れて通路が塞がっていたり、逆に道が出来たりしていた。足場も脆いので慎重に進みながら史料を探していく。
 ふと足音が聞こえた気がして立ち止まる。どうやら上の階で誰かが走っているようだ。砂ぼこりがハラハラと落ちてきていたが、それが突然大粒の石片に変わり天井が崩れ落ちた。
 「わああああー!!」
 「うわあぁ!!」
 「ひゃあぁ!!」
 慌ててその場から逃げ去る。すると上から男女2人が落ちてきた。2人は空中で体勢を整え、猫のように瓦礫の上に綺麗に着地した。
 「・・・ビックリしたぁ! 何で床が抜けるんだよぉ!」
 落ちてきた少年が涙声でぼやく。
 「いいから! 走って!」
 「わ、さやか、待って!」
 「へ!?」
 少年と同い年と思われる少女が猛然と走り出す。少年が慌てて後を追い、幸も追い立てられるような形で走り始めた。
 勢いに任せ右に左に走って行くうちに小部屋に入り込んでしまい、行く先がなくなってしまう。幸が困って後ろを振り返ると、それに倣ったように後ろの2人も後ろを向いた。
 「・・・はぁーーっ! 良かった、撒けたみたい。」
 「でも、ココ何処? てかアンタ誰?」
 少年が今さら幸の存在に気付いて首を傾げる。
 「何か走らないといけない雰囲気だったので、つい。私は秋山幸。トレジャーハントをしに来た考古学者です。」
 幸は苦笑しつつ頭を下げる。
 「あ、御免なさい、巻き込んじゃった様で。あたしは遠藤琳。こっちは弟の鏐飛りゅうひ。あたし達もハンターだよ。」
 琳が腕章を見せる。それは幸も着けているものと同じだった。
 「へー、姉弟でトレジャーハントしているんだ。」
 しかしふとその言葉に違和感を覚えた。そういえば、研究所の男性は16歳の男女が遺跡に入っていると言っていた。そしてそれはこの2人の事だろう。つまり同い年の彼らは双子のはずだが、全然顔が似ていない。似ている所と言えば黒い髪と、シャナ国人にしては色白な肌くらいだ。
 (いや、でも、年の離れたキョウダイでもあんまり似ていない事もあるし、双子でも似てない事はあるか。)
 幸はその疑問は口に出さず、別の疑問を声にした。
 「ところで、何でここまで走る事になったの?」
 「それが、無許可のトレジャーハンターに出くわして、史料の取り合いになっちゃったの。でも、じゃじゃーん、無事にお宝ゲット〜。」
 琳が高らかに手に持っていた小箱を持ち上げる。中に何かが入っているようでカラカラと音が鳴った。
 「はぁ、やっぱりここにも盗賊がいるんだ・・・。」
 幸は深くため息をついた。
 「盗賊?」
 鏐飛が意味が判らないといった風に首を傾げる。
 「無許可でやっているトレジャーハンターの大半は元々は盗賊をしているからね。」
 「成る程。」
 「それより、何処に来ちゃったんだろう?」
 琳が改めて今の状況を確認する。今いる小部屋には作り付けの棚と、その中に野菜か動物の肉か、何か有機物を置いたまま朽ちてしまったと思われる染みがある以外に何もない。
 「おそらく食品の保管場所みたいだから、建物の1階か地下の可能性が高いかな?」
 幸は水晶を目の前に静かに吊り下げる。
 「『ここは1階だ。』」
 すると止まっていた水晶が勝手に時計回りに回転を始める。
 「『ここは地下1階だ。』」
 言葉を変えると回っていた水晶が手を動かしていないのに次第に前後へ振り子のように揺れ出した。
 「どうやらここは地下1階みたいだね。『この建物は3階建てだ。』」
 再び水晶は時計回りに動き出す。続いて4階でも回り続け、5階と言うと水晶は前後へ揺れた。
 「今私達は5階建ての建物の地下1階部分にいるみたい。」
 幸が琳と鏐飛に伝えると、目を輝かせて水晶を眺める。
 「凄い! 本当にダウジングって出来るんだ。」
 「ただ、正確に合っているかは判らないけどね。あくまで勘を頼りにしているから。」
 今までの道のりから、体感的に感じた建物の高さをダウジングによって明確にしただけで、もしかするとまだ地下へ続いている可能性もある。
 「ハントを進めたいけれども、まずは違反者がいた事を報告すべきかな。」
 幸が琳と鏐飛の方を向くと2人とも頷いた。
 「じゃあ帰り道を探そうか。」
 そうして3人で部屋を出た。



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