やがて幸達は昨日通った道とは反対にある崖沿いの道を進み始めた。少し進むと崖が大きく削り取られている所がある。そこに遺跡はあった。しかし・・・、
「2ヶ月くらい前に遺跡の入り口を塞ぐほどの崖崩れが起きたの。手作業で何とか人1人が通れるくらいの道は確保したけれど、中も何処か崩れてるかもしれないから気をつけてよ。」
 遺跡は崖を掘って造られたもので、本来なら崖に入り口があったのであろう。しかし鈴音が言った通り大部分は土石で埋もれ、1ヶ所だけ穴が開いていた。それが今の入り口だった。その小さな入り口から中へ入ってしばらく進むと、その穴の大きさからは想像出来ない広々としたリビングのような所へ出た。
「この遺跡は多分誰かの別荘だったんじゃないかって考えられているわ。」
 確かにそれならトラップがないのも頷ける。
 幸はゆっくりと遺跡内部を見て回った。火山の近くなので、この家が造られてから幾度も地震や崖崩れがあったであろう。それでもこの家は頑丈に保ち続けていてその丈夫さに驚かされる。しかし、扉やその付近の壁だけが不自然なほど大きく損傷している。扉が壁よりももろかったとしても、それだけ大きく壊れていれば何処か壁の一部くらい壊れていてもおかしくないのだが、どこも崩れていない。
「ねぇ、この遺跡に家具とか何にもないけれど、全部外に運び出して何処かで研究していたり、保存しているの?」
 鈴音に聞いてみたが、鈴音は地面を睨みつけただけで何も返事をしない。
 ふと、その態度で昨日鈴音を怒らせた言葉を思い出し、地雷を踏む覚悟である推測を言った。
「もしかして・・・、トレジャーハンターって名乗る盗賊に、盗まれたの・・・?」
 その言葉を聞いたとたん、鈴音の鋭い視線は床から幸へと移った。幸の推測は当たりだった。
「盗まれた、と言うより騙されたって言った方が正しいわね。しかもここの遺跡にあったもの全部持っていかれて、おまけに莫大なお金を請求されたわ!!
 当時のやり場のない怒りを思い出し、八つ当たりに幸の胸倉を掴む。しかしすぐにそれがお門違いだという事に気付いて手を離した。
「1年程前、この遺跡は崖崩れが起きた時たまたま崖の中から現れたの。この近辺には遺跡なんてなかったから大発見で、考古学者を急いで呼んで調べてもらう事になったの。そして来たのがトレジャーハンターだったのよ。遺跡とか考古学とかに親しみのない、小さな村だから、研究方法とか、トレジャーハンターの悪評とかよく分からなくて、そいつらの言われるままにしてしまった。一般人はともかく、依頼者の村長でさえも遺跡内や研究作業を見学させてくれず、遺跡を荒らして、お金になるもの全部取り出して、最後に村に今までの調査費やら、これから研究費やらを請求してきたの。その時調査費の相場や国の援助金の事なんて知らなかったし、向こうも脅迫してきたから仕方なく他村から借金までして払う羽目になった。
 その後本来調査をするはずだった考古学者達が来たわ。その時私達は騙されたって知ったの。あいつらは考古学者達が別の研究で来るのが遅くなるから、代わりに先にトレジャーハントをして研究を進めやすくするために来たって言ってたんだけど、実際は違った。そんなやつらを派遣させてないって、その考古学者達は言ったの。
  残ったのは大して価値のない壊された遺跡と、多額の借金。もともと収入の少ないプロスト村が一体どうしてこんな目に遭わなきゃいけないのよ・・・。」
 鈴音が力なく呟く。幸も何と答えていいか分からず視線を落とす。
「だから私は考えたわ。奪われたなら奪い返せばいいって。トレジャーハンター相手に泥棒を始めた。別に人から奪ったものを取り返すんだもの、悪くなんてないわ。それに盗賊が泥棒に遭ったって、警察に行くわけない。行けるわけがない。それで奪ったものを村に持って帰って、他村の借金の返済に充てているのよ。知ってるのは身内だけだけど。
 ・・・だから、私はあんた達の事大っ嫌い。」
 鈴音が幸に吐き捨てる。幸に向けられたその目はトレジャーハンターに対する憎悪が込められていた。

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