翌日、鈴音の気も知らずに、外はすがすがしい青空が広がっていた。もともとこの国はそんなに雨は降らないので、当たり前の光景なのだが。
「遅い・・・。」
鈴音は貧乏ゆすりをしながら壁にかかった時計を見た。時刻はもうすぐ正午を迎える。しかし幸が起きてくる気配がない。幸が知らぬ間に家を抜け出したのかと思い玄関を見たが、そこにはきちんと幸の靴があった。と、いう事は未だに幸は寝ているという事になる。
さすがに痺れを切らして起こしにいこうと立ち上がろうとした瞬間、幸のいた部屋の戸が開く音がした。その後ゆっくりと幸は姿を現した。
「・・・・・・おはよう・・・。」
「もう『こんにちは』よ。よく人の家でこんな時間まで寝ていられるわね。」
「ごめん、昨日『力』を使いすぎちゃって・・・。」
幸の顔を見るとまだ眠たそうな顔をしていて、疲れが取れきっていないように見える。
「何よ、私が重かったとでも言いたいの?」
「違う違う! その前だよ。鈴音はびっくりするくらい軽かったよ。・・・私より・・・軽いかも・・・。」
幸の落ち込みぶりから、鈴音が重くない事だけは理解できた。
「で、行くの? 遺跡。行くなら早くしてよね。」
「あ、ごめん。ちょっと待ってて。」
幸は少々ふらつきながら身支度を始めた。その様子に鈴音は不安を覚えずにはいられなかった。
「鈴音ちゃん!」
遺跡に向かう途中、2人は初老の男性に呼び止められた。男性は畑仕事をしていたが、土が食物作りに向いていないのか、季節の割に畑には十分な大きさに育っている作物はほとんどなかった。
「伯父さん、昨日は伺えなくてすみません。」
鈴音は幸の支えている手を強引に払ってお辞儀をした。
「いやいや、お母さんが来てくれたからいいよ。本当、こっちが謝りたいよ。私の所為で鈴音ちゃんにまで出稼ぎに行って貰ってるなんて・・・情けないよ。」
「いいえ、私が勝手にやり始めた事ですし、それに村の皆のために何かしたくて仕方なかったのでいいんです。」
遠くから「村長!」と呼ぶ声がして、その男性は「また後で。」と言って去っていった。
「今の人って、プロスト村の村長さんで鈴音の伯父さん?」
幸が尋ねた。
「そうよ。」
鈴音はそっけなく答えて、幸を支えにして再び案内し始める。
「そうなんだ。でも、村の人のために出稼ぎってどういう事?」
しかし鈴音は幸の言葉を無視して歩き続けた。