「それでは幸さん、この部屋を使ってね。」
 母親は部屋に案内すると、幸と鈴音を残して何処かへ出かけてしまった。
「・・・何であんたが私の家に泊まる事になるのよ。」
 鈴音は幸を再度睨み付けた。
「ごめん・・・つい・・・。」
 幸は申し訳なさそうに軽く俯く。
「ま、うちの母親は強引だからね。」
 鈴音はあきらめたように言い放った。
「明日になったら、さっさとどっかに行ってくれると嬉しいんだけれど、何処か行く所あるの? まさかこの村が目的地とかじゃないわよね?」
 その問いかけには何故か敵意が込められている。
「この村は中継地点だから長居はしないよ。ただ・・・、そろそろ旅費を稼いでおきたいし、この辺りに遺跡って何かない? トレジャーハントがしたいんだけれど。小さくていいから。」
「この村には何にも残ってないの!! さっさと出て行って!」
 幸の言葉を聞いたとたん、鈴音は激高して怒鳴った。
 幸は呆然とし、怒った鈴音を見上げた。鈴音の体は怒りで震え、目には激しい憎悪が込められている。このやり取りで鈴音が何故幸に過剰な敵意を示しているのかを理解した。恐らく鈴音は過去にトレジャーハンターと名乗る盗賊に出会って襲われた事があり、幸がトレジャーハンターである事を何処かで知った。そして幸もまたその人達と同族なのではと恐れているのであろう。
「ごめん、分かった。トレジャーハントはしない。でも・・・、遺跡があるのなら見てみたいな、考古学者として。」
 出来るだけ鈴音をこれ以上興奮させないように穏やかに尋ねた。鈴音は幸を信じていいのか、しばらく疑り深くじっと幸を睨んでいたが、最後にはこう言った。
「まぁ・・・何も残ってないし、これ以上荒らされる事もないわよね。それにひったくり犯おぶっちゃうような馬鹿が自ら遺跡荒らしをするとは考えられないし。・・・いいわ、連れてってあげる。ただし・・・私と一緒に遺跡内に入るのが条件よ。」
「え!? でも、鈴音は足が・・・。」
 鈴音の足を見ると、見るからに痛々しく腫れ上がっている。この状態では明日に腫れが引いているはずがない。
「別にこんなの動かしてた方が治るわよ。それに遺跡にはトラップなんてないし、小さいからそんなに動き回らないし。」
 幸は賛成出来なかったが、それでも遺跡を見てみたいという気持ちに負け、同意する事になってしまった。

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