幸の後を数人の考古学者が続き、幸が床を踏んで壁を動かした時には再び床を踏まぬよう注意を払いながら進んでいく。
 合流してからも大分進んだが、一向に部屋にたどり着く気配がない。
「本当に大丈夫なのか?」
 やはり、こんな子供がダウジングなんて高度な技が出来るのか、という批判交じりの声が後ろの方から聞こえてくる。
 幸も不安ではあったが、確実に近づいている気がした。しかし、もう目標物は目の前にあるのに、あと一歩が近付けない。

「おかしい・・・。」
 幸は歩みを止めた。必然的に他の考古学者も立ち止まった。
 目の前は行き止まり。しかし辺りに壁を動かす床はない。
「石版はここにあるはずなのに、ここへ入るための道を作る床がない。」
 目の前の壁を見つめる。水晶はこの壁の向こう側に石版があると示しているのだが、その周りを1周しても道を造るための床が見当たらなかった。
「いったいどうするんだ? ここまで来て引き返すとかはないだろうな?」
 後ろから疑心の目を感じ、居たたまれなくなる。幸自身も焦りを感じ始めていた。
「からくり扉・・・とかじゃあないかな・・・?」
 不安な心を隠す為、幸はあちこち、いろんな方向に壁を押してみるが、何も起きない。
「押してダメなら引いてみろ、とは言うけれど、手前に引けるような持ち手や引っかかりは・・・ないなぁ。」
 ぼそぼそと独り言を言いながらあれこれやってみるが、どれもこれも変化が起きない。
「いっそ破壊か?」
 焦って1番やりたくない手段を口にする。
「おい! 破壊ってどういう事だ!」
 それを聞き逃さなかった1人に肩を強く掴まれる。
「さっ最終手段です!もしかしたら元々出入口が作られていない場合もありますので、その場合は破壊するしか方法がありませんから!」
 慌てて弁解するが、すでに幸への不信が疑いないものに変わっていた。
「やっぱり任せるべきじゃなかったんだ。」
 誰かが不満を漏らす。その言葉で幸の身体から力が抜け落ちていく。
 自分が頼りになるような存在じゃない事は解っている。しかし己の力不足に目の前が暗くなっていく。
(あの日から、何も変わらない。)
 不意にあの日の光景がフラッシュバックする。思わず足が崩れそうになったが、必死で堪える。
「『押してダメなら引いてみろ』・・・、『引く』・・・。」
 その時、考えを巡らしていた美優の従兄がある事に気が付いた。
「手前、じゃなくて、横、に引くっていうのは?」
 その言葉で幸が我に返る。
「横・・・? そういえば、壁が動く時は横にスライドしていますね。」
 幸は行き止まりの壁を観察してみる。すると、壁の右端は右隣の壁との隙間に飲み込まれるように続いていて、左端は左隣の壁との間に隙間がある。
 幸は左端の隙間に爪を引っ掛け、右へ動かすと、指が引っ掛けられる程度の隙間が出来た。その隙間にきちんと指を引っ掛けた後、力の限り壁を右へ動かした。

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