翌日美優に見送られ、エザム遺跡に幸と美優の従兄はやって来た。
「君は本当にチームに加わらずに遺跡に入るのかい?」
「ええ。やっぱりトラップが仕掛けられていた場合複数で行動すると危険ですし、また危険な目に合わせたくありませんから。」
 幸は軽く準備運動をして、遺跡を見渡した。エイス遺跡と比べると、かなり大きくて広そうに見える。
「それは別にいいんだが、この遺跡の噂を知ってるか?」
 各地の遺跡の様々な噂を思い出してみたが、思い当たらなかったので首を横に振る。
「この遺跡の通路は、入るたびに形が変わるらしいんだ。そして何人もの考古学者やトレジャーハンターが道に迷い、出られなくなってしまうらしい。」
「形が変わる・・・?」
「私もそれに興味を持ってここにやって来たんだが・・・、気をつけた方がいい。」
「はい。それでは先に行きますね。」
 幸は1人で遺跡の入口へと向かっていった。

 入るたびに形が変わると聞いたので内部はもっと複雑な構造をしているのかと思いきや、とても単純な構造をしていた。分かれ道はほとんどなく、直線的な道が多い。しかしエイス遺跡にはいくつか窓がありそこまで暗くなかったが、ここには窓がなく暗いため明かりなしで進めば確実に道に迷うだろう。
 背後で美優の従兄達の話し声が聞こえる。彼等も遺跡内に入ってきたのだ。本来ならトレジャーハンターが先に遺跡内部を探検して安全を確認してから考古学者達が内部に入って研究するものだったが、トレジャーハンターが盗賊化してしまった今では考古学者達が遺跡内部の安全を調べなくてはならなくなっていた。
 しかし別行動をすると言った以上、彼等の事を心配しつつも幸はどんどん先へと進んでいった。


 ところが突然、聞こえていたはずの声が聞こえなくなってしまった。随分距離も開いてしまっていたし、彼等が別の道に進んだ可能性も考えると別におかしな事ではないのだが、でも何処か不自然な途切れ方であった。
「あれ・・・でも、分かれ道・・・あったっけ?」
 立ち止まり、距離や分岐路をメモした紙を見てみるが、しばらく分岐路などなかった。
 気になって幸が後ろを向くと、今まで進んできた道の突き当たりに壁がある。
 「え? 今まで直線道を進んできたのに、なんで壁が?」
 幸はその壁に走り寄った。

 ガーーー

 ガタンッ!

!?
 驚いて後ろを振り向くとそこには新たに壁が出来ていた。
「道が変わった!?
 元の進行方向へ歩いていくと、再び壁が動き出し、右手に新たな道が出来た。
 疑問に思い何度かその通路を往復してみた。するとある床を踏むたびに四方に壁が出来たり道が出来たりした。
「これって、ある道を通過したら道が変化するって事?」
 一度通れば道は次々に変化してしまう、元来た道を行こうと思って同じ道を通れば更に道が変わる。そして再び同じ道を辿る事が出来無いから今まで何人もの人が道に迷ってしまったのであろう。
「これは普通に歩いていたら出られなくなっちゃうなぁ・・・。」
 そこで首にぶら下げてある水晶のペンダントを取り出し、目の前に吊り下げた。立っている場を軸にゆっくりと、水晶がなるべく大きく揺れないように回る。するとある地点で不自然に水晶が回りだした。その方向で幸が止まると、力が加わっていないにもかかわらず、水晶は回り続けた。
「今まで目標物までの道順を調べるダウジングって上手く出来なかったけれど、この水晶ならなら上手くいけるかも。」
 水晶が回る方向には壁がある。そのため道を何度か往復してその方向に最も近い道を造りだし、誤って壁を動かす床を踏まないように気を付けながら、新たに出来た道へと進んだ。

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