「うわーっ! 良かったー! 日が沈む前に着いたー!」
 夕日が射す中、幸はエザム村へと到着した。村は夕食の支度をしているためか、ひっそりとしている。
 さっそく宿を探そうとするが・・・、

「宿屋は何処・・・?」

エザム村は細い小道が多く、大きな通りがない。だから何処が住宅街で、何処が商店街なのかが分かりづらい。人に聞こうにも人通りはなく、仕方なく歩き回ることになった。
「折角日が沈む前に着いたと思ったのに、結局宿が見つかる前に沈んじゃうじゃん。沈んでからだと空き室がなくなっちゃうのに・・・。」
 ぶつぶつ言いながら進んでいたが、ふとある異変に気付いて足を止める。
「・・・ここ、通ったような・・・。」
 村の景色は何処も似ていて、同じ場所なのか、違う場所なのかが分かり辛い。
 おそらく気の所為だろうと進んでいくが・・・、
「道にまた迷ったー!?
さっきからずっと同じ場所へ出てきてしまう。日も沈み、辺りが本格的に暗くなる。
「あわわわ・・・、どうしよう。こんな所で野宿するのは怪しすぎるし・・・。」
 きょろきょろと見回しても、地図や看板はなく何処に立っているのかさえ分からない。
「家にいる人に聞くしかないのかなぁ・・・。」
 道を聞くためだけに人の家を訪ねるのは何とも気まずいが、今はそれしか方法がなかった。
 そこで最も近くにあった家のドアを叩いた。
「はーい。」
 家の中から声が聞こえてくる。ドタドタという音が響き渡り、そしてドアが勢いよく放たれる。
「すみませーん。今日はもう閉店なんですー・・・よ?」
 中から現れた女性は、幸を見て驚きの表情を見せた。
 一方の幸も、ここがお店だと知らなかったので驚いた。
「・・・珍しいわねー、こんな時間に女の子がやってくるなんて・・・。」
「あ、突然すみません。道を尋ねたいんですけれど・・・。」
 女性の顔を見ると、相手はきょとんとしていた。
「え? 道? 何処に行きたいの?」
「宿屋を探しているんですけれど、見つからなくて。」
 女性は不思議そうな顔をしていたが、幸に店の中に入るよう手招いた。

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