「初めまして、秋山幸です。突然お邪魔してしまってすみませんが、今夜はよろしくお願いします。」
夕食の席で幸は挨拶をした。美優の家族と従兄は幸に興味津々のようでずっと幸を見つめている。
「ちょっと、そんなに見てたら失礼よ。」
「あ、大丈夫です。いきなり知らない人が押しかけてきたら、私だってそうしてしまいますし。」
苦笑いをしつつ、美優をなだめる。
「いや、こちらこそ失礼した。どうぞ遠慮せずに食べなさい。」
美優の父親に促され、食事を頂く事にした。
「ところで、さっちゃんはどうしてこの村に来たの?」
「エザム遺跡を調べに来たんです。」
「って事は、さっちゃんも考古学者?」
「はい。」
幸が返事をすると、家族全員が目に穴が開くくらい幸を見る。
「君が? 君くらいの歳じゃ、誰も考古学者だと思わないんじゃないか?」
シャナ国では早ければ10歳から働きに出る子供もいるが、知識と経験を重んずる考古学者は、何年間も同じ研究チームで雑用をこなしながら勉学に励まなければ現場には入れさせてもらえなかった。
「ええ、確かによくあしらわれますね。でも私は遺跡に入る許可さえ下りればいいので、問題はそんなにありません。」
「一体何をするんだい?」
「探し物があるんです。」
「探し物?」
「はい。各遺跡に配置された石版を探しているんです。そしてその石版を全て読み解き、1つの文章にまとめたいんです。」
「・・・聞いた事ないな、そんな各遺跡に石版があるって話。」
少し間が開いて、再び従兄が話し出す。
「石版があるとして、それじゃあ普段はどうやってお金を集めてるんだい? 考古学チームにも加わらず各地を回っていたら、まとまったお金なんて入ってこないだろう?」
「トレジャーハントをしています。」
その言葉を聞いた瞬間、その場にいた幸以外の全員が身じろいだ。
「ト・・・トレジャーハンター・・・!?」
「あくまでメインは考古学者ですけれど。」
しかし家族は動揺している。まさか招き入れた客がトレジャーハンターだったとは、夢にも思っていなかったのだろう。
「誤解があるようですが、トレジャーハンターは盗賊ってイメージがありますけれど、皆が皆盗みを働くわけじゃありません。昔のままのトレジャーハントをきちんとやっている人だっています。私は後者を、誇りを持ってトレジャーハンターと呼んでいます。」
ふと、幸はエイス遺跡で見つけたあの置手紙の事を思い出した。
「そ、そうよね。ごめん、よく知りもせず驚いちゃうなんて。」
美優が自分らのとっさの行動に反省して謝った。
「別に平気。・・・この反応が、普通になっちゃったからね。」
幸が寂しそうに笑った。
「さーて、と! 気まずい話は終わり! 折角作ってもらった料理が冷めちゃうし、どんどん食べるね!」
真剣な表情から一転、明るく笑って元気よく食事を再開した。美優もその笑顔につられて、つい微笑んでしまった。