どのくらい時間が経っただろうか。壁を何度も動かしながら進んでいくが、なかなか目的地点に辿り着けない。たまに行きたい方角に行こうにも壁が動かないために遠回りせざるを得ない場所もあったが、それにしても時間がかかっていた。もしかしたらダウジングを始める前の時点ですでに大分道に迷っていたのかもしれない。
 何度目かの壁移動を終え、造った道を進もうとした時、隣の壁の向こう側から物音が微かに聞こえた。
 音がした方の壁に耳を当て、じっと音を待つ。

 すると向こう側で微かに壁が動く音がした。
「ひょっとして・・・!」
 幸は床を踏み、折角造った道を造り直し、音のした壁に通路を作り上げ走り出すと、突然道の突き当たりにあった壁が開いた。
「あ!」
「ああっ!」
 開いた壁の向こう側には美優の従兄達が立っていて、幸は慌てて走るのを止めた。
「君! どうやってここに!?
 従兄が幸の方へ歩み寄る。
「それよりも、皆さん全員そろっていますか?」
 幸が尋ねるとチームのリーダーが確認し、首を縦に振った。
「良かった。誰かはぐれていたら探し出すのが困難だったので。」
 思わず安堵のため息をつく。
「? 今までずっと1本道だったけど、どういう事だ? もしかして、今壁が動いたのと何か関係が?」
 考古学者の問いかけに幸が頷く。
「この遺跡は特定の床を踏むと壁が動き出し、道が変化します。しかも1つの床で数方向の壁がランダムで動くので、同じ床を踏んでも毎回通る道が変わります。だからこのまま進むと危険です。」
「入るたびに形が変わるという噂は本当だったのか!?
「はい。」
 試しに幸が床を踏むと遠くの方で何かが動く音がした。更に踏むと、先程幸がやって来た道が塞がれ、また別に動く音が聞こえた。
「つまりこのまま進んでも、一向に部屋に辿り着けないという事か。」
 幸は頷いた。考古学者達が落胆する。
「じゃあ、今まで調査した道筋も全て無駄って事か。一体どうすればいいんだ!?
「それは・・・私に任せてもらえませんか? この遺跡に幾つ部屋が設けられているのかは分かりませんし、全ての部屋に辿り着く事は出来ませんが、遺跡内で最も重要な部屋にだけは行く事が出来るかもしれません。」
「一体どうやって・・・?」
「大西さんに石版について話しましたよね。その石版は遺跡の最深部にあるらしいんです。たとえ最深部でなくても、遺跡内で最も重要な部屋に置かれているはずです。だからその石版を目標物としてダウジングを行えば行く事が出来ます。・・・・・・上手くいくか分かりませんが。」
「本当にそんな事が出来るのか?」
「若干賭けにはなってしまいますが。」
 沈黙が広がる。果たして見ず知らずの少女に進路決定を委ねていいのか、皆から疑いの目が掛けられる。そんな事は幸も重々承知だ。しかしこのままやみくもに進んでも皆を危険な目に合わせる事には変わりはない。
「可能性があるなら、それにかけるしかないな。」
 沈黙を破り、リーダーが返事をした。
「では、私の言う通りに進んで下さい。」
 幸は水晶を吊り下げ、ダウジングを再開した。

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