ダウジングをして琳を探し出すと、琳は棚を漁っていた。
幸が近付くと琳はすぐに気が付いてムスッとした表情になった。
「どうしたの? また何か鏐飛が言ってきたの?」
幸はあわてて「そうじゃないんだ。」と否定してから謝った。
「琳に鏐飛の気持ちを正しく伝えられてなかった。鏐飛は一人で何もさせてくれないのは信用がないんじゃないかと腹を立てていたんじゃなくて、自分に構ってばかりで琳が本音を言わないのがフェアじゃない事に腹を立てていたんだって。だから琳も鏐飛をもっと信用してあげたらいいんじゃないかな?」
幸にそう言われ、琳ははっとする。
「・・・ただの意地っ張りじゃなかったんだ。あたしは駄目なお姉ちゃんだな。鏐飛の為とか言って、結局はあたしが寂しかったのね。本当の弟が居ない寂しさを、鏐飛で紛らわしていたのね。」
すると琳はすくっと立ち上がり、幸に向かい合った。
「幸、鏐飛の居る所解る? 鏐飛に謝らなくちゃ。」
そう言われて幸は「もちろん、探してみせる。」と答えた。
またしてもダウジングをしながら鏐飛の後を追う。しかし今度は止まっているようで、安定してダウジングする事が出来た。いよいよ反応が強くなり、部屋に入ったがそこには誰も居なかった。
「・・・あれ?」
「え? ダウジング失敗したの?」
しかし水晶はここに目的のものがあると示している。首をかしげながら、詳しく何に反応しているのか探ってみると、備え付けの戸棚から反応があった。棚の扉を開くとたくさんのノートが収納されていて、ノートに挟まれる形で頑丈そうな箱が収められていた。
「もしかして史料の方に反応しちゃった?」
幸は琳に申し訳なさそうに言い、その箱を引き出した。中を開けてみると手のひらに収まるサイズの四角い機械が入っていた。片方の面には丸いレンズが、反対側には画面が嵌め込まれている。
「一見カメラに見えるけれども、それにしてはボタンが多いなぁ・・・・・・あ!」
琳は幸が何かに気付いたのかと思い幸の顔を見たが、幸は機械とは違う方向を見ている。琳も同じ方を見ると、そこには鏐飛が気まずそうに立っていた。
「幸・・・、そこはおれに気付かなかった振りをしてくれよ・・・。」
たまたま部屋に入ろうとして出くわしてしまったようで、鏐飛は入る事も立ち去る事も出来ずにオロオロとした。
「鏐飛!」
琳が鏐飛の方へ歩み寄ると、鏐飛は顔を渋くした。
「だからおれ一人でも平気だってば。」
その瞬間琳は頭をペコリと下げた。
「御免、鏐飛。あたしの方が鏐飛に甘えてたの。」
その言葉を聞いて鏐飛の顔に「?」が浮かぶ。
「鏐飛に頼られている間はあたしはお姉ちゃんで居られるから、もっと甘えて欲しかったの。その考えが鏐飛への甘えだったの。」
鏐飛は気まずそうに目線を反らした。やがてぽつりと声を出した。
「おれは・・・、琳を本当の姉ちゃんの代わりにしようとした、琳を琳として見てなかった自分自身が許せなかったんだ。おれの方こそ八つ当たりだった。御免。」
そして鏐飛も頭を下げた。すると琳は「お互い様だったね。」と苦笑した。それを見た鏐飛も口を綻ばせた。
「所で幸、それってビデオカメラ?」
鏐飛は気恥ずかしくなって話題を変える。しかし幸は「ビデオカメラって何?」と首を傾げる。
「え、知らない? 映像が撮れるカメラだよ?」
「テレビに映る映像を撮るカメラ? 小さくない?」
テレビでテレビカメラを持っている人が映っているのを見た事があったが、それは肩に担がないと持てないような大きさのカメラだった。
「その家庭用サイズだよ。昔は家庭用も担ぐようなサイズだったらしいけど、持ち運びしやすいよう今は写真カメラと変わらないくらい小さくなってるよ。」
幸は「へえー。」と驚きの声を上げた。
「じゃあもしかして、当時の映像が残ってるんじゃない!? だとしたら大発見だよ!」
琳が興奮してカメラを覗き込む。鏐飛がどのボタンで再生出来そうか横から声をかける。幸は言われるがままボタンをいじっているとレンズが付いている面が光り、壁に光が当たった。最初はただのライト機能かと思ったが、壁に当たっている光がゆらゆらと揺れているのに気付いてよく見ると、人間の子供とおぼしきシルエットがちらちら写っている事に気が付いた。
そしてそれに遅れてカメラから音が聞こえてきた。しかし音は割れていて、辛うじて子供の声じゃないかと判別出来る程度の音質だった。映像もシルエットが時々映る程度で、何処で誰を映したものかさっぱりわからなかったが、かすかに感じる声からとても幸せな光景が映されていたのだろうと感じられた。
「昔の人も、家族が大事だったんだね・・・。」
幸がぽつりと呟き、琳と鏐飛は何処か懐かしそうにその映像をじっと見ていた。