その先も幾つも通路が別れていて、さらには階段もあり、その度にダウジングをしていく。次第に道順のメモが複雑になってきて、やはりダウジングに従わず順番に見ていくべきだったかと顔をしかめた時、少し離れた場所で地面と何かがザッと擦れる音が聞こえた。幸は立ち止まり耳をすませると、何度か不規則に擦れる音が聞こえてくる。
「音がずっと同じ場所で鳴っている。」
幸は音の方向へ近付いていくと、男性がブツブツと呟く声も聞こえてきて驚いて立ち止まる。幸は警戒して、そっと男性が居ると思われる部屋を覗いた。
そこには幸とそう歳の変わらない黒髪の少年が何かに悪態をつきながら、部屋に備え付けられている棚を漁っていた。時々苛立たしげに地面を蹴っている。その音が聞こえていたのかと幸が認識した瞬間、突然少年は手を止め幸の方へ振り向いた。
いきなり振り返られた為、幸は身を隠す事が出来ず、少年と目が合ってしまった。しかしその白い肌と頬にホクロがある顔には見覚えがあった。
「あれっ・・・、アンタ何処かで・・・?」
相手も幸の顔に覚えがあったようで、思い出そうと宙を見つめる。
「ガフィート遺跡で一緒にハントした秋山幸だよ、鏐飛?」
幸が答えると遠藤鏐飛はああ! と手を打った。
「久し振り。琳は一緒じゃないんだね?」
以前鏐飛の姉の琳も一緒にいたのだが、辺りには他の人の気配が一切しない。
すると幸の言葉を聞いた鏐飛は怨めしげな顔になった。
「あんなヤツ知るもんか。」
幸は驚いて鏐飛の顔をまじまじと見た。
「・・・何?」
すると鏐飛は居心地悪そうに幸を見つめ返す。
「琳と喧嘩したの?」
幸の言葉を聞いて鏐飛は顔を背けた。
「幸には関係ないよ。」
そう言って再び棚を探り始めた。
しかし幸は以前喧嘩しながらもお互いを信頼している雰囲気だった2人の事を思い出して、その場を立ち去る事が出来なかった。
「よっぽど腹を立てているようだけれど、何があったの?」
鏐飛は無視して作業を続けたが、幸が引かずにじっと鏐飛を見つめ続けていると居たたまれなくなって大きくため息をついた。
「此処ってさ、めっちゃ広いじゃん? だから琳に別行動しようって行ったんだけど、彼奴おれが1人になるのが心配で嫌だって言ったんだよ。おれは1人でも平気だって言ったんだけど、琳がしつこく無理だって言うから頭にきて1人でさっさと此処まで来たんだ。」
「なるほど。・・・でも、もしかしたら鏐飛が1人になるのが心配なだけじゃなくて、琳が1人になるのが嫌でそういう言い方をしたって事もあり得るんじゃないかな?」
すると鏐飛はあり得ないと大きく首を横に振る。
「情けないけど、おれの方がそういうの苦手なんだよね・・・。だから琳の言葉は額面通りだよ。もう甘えたくないのに、琳の奴はおれの世話ばっか焼くんだからイライラする。」
鏐飛は再び棚を確認したが「珍しい物は無いな。」とため息をついて棚から離れた。
「おれは次の部屋に移動するよ。じゃあな。」
そう言って鏐飛は部屋から出ていった。
「・・・反抗期ってやつかな・・・?」
反抗期を経験した事のない幸は何も言えず、遠ざかっていく鏐飛の背中をじっと見ている事しか出来なかった。