ヘリド遺跡から宿へ帰ってくると幸は次の石版がある遺跡をダウジングした。
「ここから1番近い石版は・・・、フィアス遺跡か。」
 地図の上で1点を指し示す水晶を鈴音は渋い顔で見つめる。
「鈴音? どうかした?」
 鈴音の異変に幸が訪ねると、鈴音は軽く息を吐いた。
「・・・ごめん、一緒に行きたいけど、プロスト村の祭事の準備を手伝う為に一度帰らないといけないから、そこまで一緒に行けない。」
 鈴音は心底残念そうに告げた。
「そうなんだ・・・。それじゃあ仕方がないね。」
 幸の言葉を聞いて鈴音は「帰るなんて言わなきゃよかった。」と嘆く。
「でも、ギリギリ引き返せる所までは一緒に行ってもいいかしら?」
「もちろん。」
 すると鈴音は地図を見て再び難しい顔をする。
「・・・無理はしちゃダメだよ?」
 鈴音の表情を見て幸が心配すると、鈴音は違う違うと首を振った。
「祭事が終わったらまた幸と合流したいなと思ったの。・・・イヤ?」
 鈴音の言葉に今度は幸が首を横に振る。
「ううん、嬉しい! じゃあフィアス遺跡の次に目指す遺跡を探そう。」
 再び幸は地図の上に水晶を垂らしてダウジングを始める。フィアス遺跡から次に近い遺跡はグラフィート遺跡だった。
「ここで合流が出来るかな?」
 幸の示す村を見て鈴音は自分の村との距離を調べる。
「わかった。多分私の方が先に着くかもしれないから、幸がこの村に着く目処がたったら、この村の郵便局留めで私宛に何日に村に着くか手紙を書いてくれる? 書いてくれた日付の14時に郵便局前で落ち合いましょ?」
「わかった。」
 幸が答えると鈴音は嬉しそうに笑った。

 それから幾つかの村を通り過ぎてから、鈴音はプロスト村へ帰る為に別の道を選んだ。そして幸は手持ちの旅費が減ってきた為、久々に一人で遺跡にハントに行く事にした。
「ここの遺跡は集合住宅跡らしいから、道にさえ迷わなければ安全そう。」
 研究所で遺跡内の地図を貰って眺めると、構造は単純だが幾つも通路が別れていて、きちんとメモを取らないと迷いそうだった。
 紙と鉛筆を取り出し、遺跡へと入っていく。入口近くは調査が済んでいるようで、考古学者達の姿は見えなかった。
 そのまま進み続けると、何人か考古学者とすれ違った。お辞儀をして通り過ぎると、再び辺りに人の気配がなくなった。
「ここから先がまだ進んでいない通路か・・・。」
 道は三方に別れていて、右に進む道は地図にその先が書かれていた。まっすぐ進む道と左の道は地図に何も書かれていない。幸は水晶を取り出してどちらに進むべきかダウジングをした。すると水晶はまっすぐ進む道を示したので、そのまま歩き始めた。

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