「何て書かれているの?」
 鈴音が少し不安げな様子で幸に尋ねる。幸は一通り目を通した後、文章を読み上げた。
「『やがて研究の停止を呼びかける組織が現れた。初めは話し合いで解決しようとしたが、科学の発展によりどのような影響が出てくるのか具体的な根拠がなかった為に誰も取り合おうとはしなかった。中には理解を示してくれた者もいたが、その人々も止めるのではなく影響を及ぼさないようにする為に更に研究を重ねるべきだという意見だった。
 そのうち一部の研究停止派は暴力で訴えるようになった。研究所の破壊や論文の抹消を行うようになり、次第に治安が悪化していった。
 そんな時にある研究所で大規模の爆発事故が起こった。これまでにも研究所の火災は何度か起きていたが、今回は近隣住民をも巻き込む過去最大規模の事故になった。そしてこの事故により一層停止派が過激な作戦を行うようになった。』」
 その文章を聞き、鈴音は前に石版を見た時の事を思い出す。
「前にチェルト遺跡で見た石版に書かれていた、その過激派が現れる要因になった事が今回は書かれていたのね。」
「うん。でもやっぱりその過激派が一体何をしようとしていたのかがわからないな。」
 幸はこれまで読んだ石版の内容を思い出すが、石版を全て見つければいい話だと改めて感じ考えるのをやめた。
「・・・はー、しかし疲れた! こんなに時間がかかるなんて。」
 鈴音は大きく伸びをした後部屋から出る為に再び壁を昇る。身体を引き揚げる前に辺りに人が居ない事を確認してから幸に手を伸ばす。
「本当に。でも見つかってよかった。ありがとう、鈴音。」
 その言葉に鈴音は微笑み返した。
「思いの外長居しちゃったから、さっさと次の石版がある遺跡に移動しなきゃね。」
 そうして2人はヘリド遺跡を出て、次の村へ旅立つ準備を始めた。

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