「やっぱり見取り図がないと部屋を見落としちゃうね。」
 幸は苦笑して壁を回り込んだが、そこに扉はなく壁しかない。
「あれ?」
 別の部屋から続いているのかと思い、別の部屋に入って見落とした部屋と面している壁を見たがそこにも扉はない。
「へ? もしかして、この部屋は何処からも入れない!?
 幸と鈴音は部屋の周りをグルグルと回って見てみたが、何処にも入口がなかった。
「石版を書いた人はまた面倒な事をしてくれたわね。」
 鈴音が忌々しげにため息をつく。天井の鏡に気付かなければ、柱だと思って見落とす所だった。
「でもどうやって中に入ろうか・・・。」
 幸が困った顔で壁を手でなぞる。
「壁と天井の間に隙間があるんだから登ればいいんじゃない?」
 鈴音のあっさりとした提案に幸はあんぐりと口を開ける。
「いやいや、ハント依頼がある遺跡ならともかく、ここは史跡だよ? 学芸員の方に叱られるよ。」
「バレなきゃいいのよ。」
 すると鈴音は靴を脱ぎ辺りを見回すと、壁を蹴って壁の縁まで飛び上がった。縁に掴まり懸垂の要領で身体を引き揚げ、身体を壁の向こう側へ垂らして幸に手を伸ばした。
「ほらっ、早く!」
「・・・・・・鈴音って結構胆が座ってるよね・・・。」
 幸は呆れた声を出したが、このまま鈴音だけが中に入っても石版は読めないので、諦めて鈴音に向かってジャンプした。
 鈴音が幸の手を掴むと同時に部屋の中に飛び降りて、自身の重さで幸を引き揚げる。幸は縁に届くと手を離して壁を乗り越えた。
 飛び降りた部屋の中央には1つだけ石版が置かれていた。幸は近付いて軽く目を通す。
「・・・これだ! これが探していた石版だ!」
 幸は石版をじっくりと調べていく。

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