目の前には石版ではなく、木で出来た天井が広がっている。そして幸は真っ青な顔でベッドの上に横になっていた。
昨日の朝プロスト村を出た幸は、夕方辿り着いたこの村で一夜を過ごしたのであった。
幸は天井に向かって手を伸ばした。手の甲を通してあの日触れた石版を眺める。今でもあの時の石版の感触を思い出す事が出来た。
「昔の夢を見るんだったら、なっちゃんの夢だけ見られたらいいのに・・・。」
顔も、本名も忘れてしまったが、一人っ子の幸にはキョウダイのような存在であった。いつも自分より大きかったなっちゃんの手の温もりを思い出しながら、幸は弱々しく呟いた。
気が落ち着いてから身支度をし、朝食をとりに宿の1階にある食堂へと向かった。食堂は人こそ少ないものの、様々な声や音で活気に満ち溢れていた。
「こういう時はやっぱりアレかな?」
幸はメニューを確かめながら呟き、料理を注文した。
「スープ具沢山、出来ればアツアツで!」
店員はよくある事なのか、さして驚いたりせず注文通りにしてくれた。他にパンやサラダを取ってレジで会計を済ませた後、席について食べ始めた。
湯気の立つスープを口の中に入れると、冷えきっていた身体に血が通い始めるのを感じた。それと同時に、ある安心感を覚えた。2口、3口、と全て食べ終わる頃には、いつもの調子を取り戻していた。
「・・・よし! 今日も頑張りますか!」
最後に頬を軽く叩いて気合を入れてから食堂を出て、今日の目的地へと向かった。
村を出てしばらく歩くと道は下り坂になり、道の両脇にあった林は開かれていった。そして殺風景なすり鉢状の大きな広場に出た。そこが今回トレジャーハントをするエント遺跡であった。
坂はなだらかな方だが、一応転ばぬよう気をつけて下りていく。歩くたびに砂が巻き上がり、たまに吹く風がそれをより一層高く舞い上がらせた。この遺跡は発掘途中なのだが、まだ朝早いため人の数はまばらで、それぞれ今日の作業計画の確認をし合っていた。1番下まで下りると、そこにはコンクリートで出来た床と、前方に小さな、せいぜい6人しか入らないであろう建物があった。建物の戸は開いていて、中を覗くとさらに下へと続く階段があった。どうやら今立っている場所は遺跡の屋上で、ここから内部へと入れるようだった。階段を下りていき、1つ下のフロアに着くと壁に「3」と書かれていた。それでこの建物は3階建てだと分かったが、次のフロアへ行くための階段は壊れ、溶岩で塞がれていた。そのため必然的にこのフロアから回る事になった。