渡った先には扉が幾つもあった。とりあえず1番手前にある扉から部屋の中へと入った。部屋は予想外に広く、部屋の後ろにももう1つ扉が付いていた。そして部屋には随分と痛んだ、――もしかしたらフロンティアが滅びる前から痛んでいたのかもしれないが――、机と椅子がたくさん並んでいた。部屋の前後には黒板が付いていたので、どうやらここは教室で、この建物は学校のようであった。
「すごい、フロンティアにはこんなに大きな学校があったんだ・・・。」
特に幸は小さな村の学校に通っていたので、その驚きはひとしおであった。幸の学校は普通の民家より少し大きいくらいで、クラスも2学年ずつ合同だったために、1つの教室にこんなにも人が集まっていたのは想像出来なかった。
何となく、近くにあった机の天板を見てみると、そこには様々な落書きが彫られていた。よくある卒業メッセージや相合傘、遊ぶためのあみだくじやマス目が彫られているものもあった。
「いつの時代にもこんな落書きがあるんだ。」
思わず笑みが零れる。
それらをしばらく眺めた後、その教室を出て次の教室へと入った。そして一通りこのフロアを見て回ったが、黒板と机と椅子以外は見つからなかった。続いて幸は2階へ下りようとしたが、見つかった階段は途中で壊れていた。
「うーん、階段はここと入り口にしかないのになぁ・・・。鉤爪を床に引っ掛けたら下りられるけれど、そうしたら鉤爪が外せなくなって床が崩れている所が渡れなくなるし、どうしよう。」
幸は階段が崩れないよう慎重に下を覗き込んだ。跳び下りようにも高さがあり、第一着地する足場が悪かった。跳び下りたら確実によろけて捻挫するだろう。
どうすればいいのか分からず、つい辺りを見回してしまう。しかし使えそうなものは何もなく、下へ下りられそうな場所もここと、先程渡ってきた吹き抜けになってしまっている床しかない。
その時、幸は階段の壁がぼろぼろな事に気が付いた。そして丁度手や足を引っ掛けられそうな窪みが幾つかある。
「ロッククライミング・・・。」
幸の頭に窪みに足をかけて下りていくイメージが湧き上がる。しかし窪み同士の間隔は広く、幸の手足の長さでは届くか届かないかの距離だ。
「いや、ちょっと無理そう・・・。鉤爪を壁に刺しながらならいけそうだけれど、壁がぼろぼろになるし、崩れる危険もあるしなぁ・・・。」
壁は幸の体重が加わって崩れる危険性もあるのに、さらにむやみに鉤爪を刺してしまったら、ますます壁は崩れやすくなる。
悩んだ末、鉤爪を使う事は諦めて、最初からある窪みだけを利用して下りてみる事にした。窪みに身体を預ける前に1度体重を乗せ、崩れないことを確認してから手足を掛けていく。見た目はぼろぼろの割に、意外と壁は崩れなかった。しかし、やはり幸の手足の長さでは無理があった。もう少しで跳び下りられそうな、でもこの高さではまだ危ない所まできて、幸は次の足が置けそうな窪みに足が届かなかった。腕力だけでも下りられない事はなかったが、手を掛ける窪みも丁度いい所にはない。
「うわ・・・、どうしよう・・・。手と足を同時に移動したら届くだろうけれど、ちょっと怖い・・・。」
下を見ると、実際よりもまだ高さがあるように感じられる。だがこのままでは下りられないため、思い切って手足を同時に窪みから離した。一瞬宙に浮き、すぐに重力に従って身体が落ちる。そして窪みにそれぞれ手と足を掛けようとした。しかし、足の方は窪みに置く事が出来たが、手の方が窪みから滑り落ち、身体を支える事が出来ずに幸はお尻から落ちていった。床は階段になっていて、しかも瓦礫が落ちて凸凹していたため上手く受身を取る事も出来ずに強く尻餅をついた。
「っ!! いったぁ・・・。」
打った衝撃が身体中にびりびりと広がっていく。思っていた程高さはなかったのだが、それでも痛くてすぐには立ち上がれない。
幸は落ちてきた状態のまま辺りを見回す。階段は3階から2階までの間のみ壊れていて、1階へは同じような苦労はせずに下りられそうであった。
痛みが引いて立ち上がれるようになると、同様に教室を見て回った。床が壊れている所はロープと鉤爪を使って渡り、見ていったがやはり他のものは出てこなかった。