「ふう・・・、お腹が空いたし、休憩しよう。」
 1階まで下りてきた幸は階段に腰掛けて、持ってきていたパンを食べ始めた。
「この遺跡はまだ発掘途中だし、崩れていて進みにくいから、何かトレジャーハントが出来そうなものがあると思ったんだけれどなー。」
 本当ならプロスト村付近にある遺跡でトレジャーハントをして旅費を稼ぐつもりだったのだが、見つけたものは全てプロスト村に寄付してしまったために、新たにトレジャーハントをしなければならなかった。そしてこの遺跡の存在を知りやって来たのだが、収穫はゼロであった。

 電気が一応ついているとはいえ、地中にあるために薄暗い。発掘作業の音が聞こえるような気もするが、辺りはとても静かだった。
 その時この階から足音が聞こえたような気がした。ふと幸は入り口近くで、もう1人トレジャーハンターが来ていると男性が言っていたのを思い出した。エイス遺跡で会ったトレジャーハンター達のように本来なら警戒しなければならないのだが、幸は何故かそのトレジャーハンターに会ってみたいと思った。危ないという意識よりも何か期待した気持ちがあったからだ。
 幸は足音のした方へ進み、順々に教室を覗いていったが誰もいなかった。そして突き当たりにある教室の前まで来てしまった。ここまで来たら幽霊でない限り、その教室内にいるだろうと思い、扉に手をかけようとした。すると、
「うわあっ!!
「きゃあ!!
幸が扉を開ける前に扉が開き、中から男性が出てきた。その人は幸がいるとは思っても見なかったらしく、大声を上げて驚いた。一方の幸も人が出てきた事には驚かなかったものの、その人の大声に驚いてしまった。
「あ、大丈夫? ・・・驚いたなぁ、こんな所まで人が来るとは思ってなくて。」
 その人は大声を上げてしまった事を恥ずかしそうに笑いながら話しかけてきた。

 教室から出てきた男性は平均的な身長よりも高く、小柄な幸は大分見上げなければ顔を見ることが出来なかった。身体はがっちりとした筋肉質ではないもののスポーツを得意としそうな身体付きをしている。この人ならあの崩れた床を跳び越えられそうだと、何となく思った。顔から判断すると20歳になったばかりであろうか、そして人を疑う事が苦手そうな少々困った笑顔をこちらに向けている。その雰囲気からすると、この男性はとても盗賊のようには見えなかった。
「ごめんね。それじゃあ。」
 相手はあまり幸のことを気にせず、少し重たそうな荷物を持って去っていった。幸はその姿をぼうっと見つめた後、教室の中に入っていった。この教室も今までの教室と特に変わりがなかった。しかし、1つだけ違う点があった。机の上に真新しい白い紙が置かれている。何となく取り上げて、紙に書かれている文章に目を通すと、そこには1度見た事のある文字が並んでいた。

『ここにある調度品は全て回収しました。だからもうこれ以上、遺跡を荒らさないで下さい。  U.N. 』

 一瞬、時間が止まったような気がした。それは、あのエイス遺跡に置いてあった手紙と全く同じだった。心臓の鼓動が早まる。幸はその手紙を机の上に置くと、慌てて先程の男性の後を追った。何故か追いかけずにはいられなかった。しかし地上に辿り着いても、その姿を見つけることは出来なかった。
「もしかして・・・さっきの人がU.N.・・・さん?」
 日が少し傾いてきた広場に立って、幸は直感的に独り言を呟いた。

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