気が付くと小さな部屋に流れ着いていた。
「頭がふらふらする・・・。どこまで流されたんだろう・・・。」
辺りを見回すと壁の一箇所に何かが描かれている。よく見ると、それはこの遺跡の地図だった。フロンティアの言葉で各部屋の名称も書かれている。
「えーっと・・・。ここは誰かさんの部屋みたいだね。」
名前が書かれているのだが、擦れていてよく読めない。
地図から推測するに、おそらくここは寮みたいな所だったのだろう。
「でも、なんで寮にトラップを設置する必要が・・・?」
思わず首を傾げる。しかしそれはこの遺跡を担当している考古学者がいずれ解き明かすだろう。とりあえず疑問を横に置き、地図を書き写す事にした。
全て写した後、部屋をよく観察してみる。ベッド、机、本棚、他にも色々と家具は置かれているが、資料になりそうなものは何1つ残っていなかった。しかし、ふと机の上を見ると、フロンティア時代に作られたであろう典型的な形をした小さな宝箱が置いてあった。
「きっとただの小物入れなんだろうけれど、こういうのってちょっと開けたくなっちゃうよね。」
何も入っていないだろうと思いつつも蓋を開けてみると、そこには紙切れが入っていた。
「何これ?」
紙を広げると、そこにはフロンティアの言葉ではなく、現代の言葉で書かれた文章が広がっていた。
『ここにある調度品は全て回収しました。だからもうこれ以上、遺跡を荒らさないで下さい。 U.N. 』
「これは・・・、明らかに最近書かれたものだね・・・。」
紙は黄ばんでおらず、文字も昔らしい表現がないため、ごく最近書かれたものと推測出来る。
「ふふっ・・・世の中にまだトレジャーハンターらしい人がいたんだぁー。こんな手紙を残すなんて、かなり変わっているけれど。」
今まで幸が見てきたトレジャーハンターは皆お金優先で、遺跡の状態など気にする人はいなかった。それを考えると、思わず笑ってしまった。
でもその思いには同意だ。誰かが確かに存在していた証を、自分勝手な理由でめちゃくちゃに壊してほしくなんてない。
やり方はちょっとおかしいが効果があるならと手紙を箱に戻そうとすると、奇妙な事に気が付いた。本来空洞のままであっていいはずの箱の蓋の裏に、板が張られている。
「・・・・・・」
何となく箱を振ってみる。
中から鎖のようなものが擦れ合う音と、軽い塊が箱にぶつかる音がする。
どうやら何かが蓋の裏側に入っているようだ。
「すみません、ちょっと壊しますよー。」
製作者も持ち主もいないが、念の為断っておく。
蓋と板とのわずかな隙間に爪を引っ掛け、板をぐいっと外す。
そこには六角水晶のペンダントが入っていた。水晶に付いている金具を見ると、あのフロンティアのマークが入っている。
「マークが入っているって事は、ただのペンダントじゃない。もしかして・・・ダウジング道具?」
早速自分が持っている地図を机の上に広げ、ダウジングを行ってみる。探すものは・・・。
六角水晶の先がある1点で止まる。そこはエザム遺跡。
「すごい。これ、ダウジングしやすい! 今までなかなか思うようにいかなかったのに。」
貴重な当時の史料だという事も忘れて、長年欲しかった物が手に入った時のように目を輝かせる。
「でも、おかしいな。何でU.N.さんはこれに気付かなかったんだろう?」
疑問が浮かんだ瞬間、
スッ・・・
いるはずのない人の気配を感じた。
あわてて振り返ったものの、そこに人はいない。
「何だろう・・・今の感じ・・・。」
身の危険は感じなかったため、再び幸は部屋を調べ始めた。