「わぁ、これがエイス遺跡かぁ・・・。」
幸はエイス遺跡の前にやって来た。
この遺跡は2年程前、火山灰の地層から発掘されたものらしい。しかし建物内には火山灰が入っていなかったらしく、発掘作業はすぐに終わり、今はトレジャーハンターが宝を探すべく何人もこの遺跡に挑戦している。
しかし、居酒屋の店員がトレジャーハンターに狙われていると言っていた割には、辺りには人っ子一人いなかった。
「うーん、もしかしてあらかた調査が終わっちゃったのかな・・・。でもそれなら出禁にしたり、取り壊したりするはずだよね。」
遺跡の入り口には何も通行を禁ずる物が設置されていなかった。・・・何者かが無断で取り払った可能性もあるが。
外壁は少々傷んでいるものの、亀裂はほとんど入っておらず、また補強もされていないことからも当時の建築技術のすごさがうかがえる。
「まぁ調べればわかる事だし、・・・・・・ん?」
気配を感じて後ろを振り返ると、遠くのほうから先程こらしめた男性達が遺跡に近付いてきている。
(もしかして・・・、この遺跡でトレジャーハントをするつもり? なら急がないと。)
彼らに見つかればまた色々と面倒そうなので、こっそりと遺跡の中へ入っていった。
中へ入ってみると、遺跡内部の構造は思っていたよりも単純だった。入るとまっすぐ通路が伸びており、右手に扉がついていたであろう枠組みが幾つか不規則に並んでいる。枠組みの先にある部屋は大小さまざまではあるが、そのほとんどが他の部屋には通じていない個室であった。その様子から神殿等といった特別な場所ではなく、生活に身近な建物であった事が分かる。
何か歴史的資料が見つかった時にどこにあったのかわかるよう、歩数を数え自分がどのように歩いたのかメモを取りつつ、1つ1つ部屋を丁寧に調べていく。
遺跡は明り取りの窓がついているものの、日差しが入って建物内の温度が上がらないようにするために窓の数が少なく、少し薄暗い。当時の照明は付いているものの、壊れているのか、エネルギーが必要なのか、点ける事が出来無い。そこで幸はヘッドライトを点けた。しかしヘッドライトには電球が付いてなく、代わりに石かガラス球の様なものが付いていた。これはフロンティアの人が作った発光石で、衝撃を与えると、それに応じて光の強さや点灯時間が変化する。半永久的に使用でき、しかも酸素や電流といったものが必要ないので、遺跡の奥深くに潜ったりする人には大変便利なものだ。しかし製造法は不明で価格がかなり高いのが玉に傷だ。
「うわっ・・・。」
通路に戻り辺りを照らすと先程まで良く見えなかったものが見えてきた。
壁のあちこちに赤黒い斑点がある。
血痕だ。
トラップが発動して何名か命を落したのであろう。結構の量が流れた跡がある。しかしそれらはどれも古いため、1度きりのトラップだったのだろう。
幸は念の為気を付けながら進んでいく。しかし・・・
カチッ・・・
何かを踏んでしまった。
「え?」
足を浮かせて踏んだ所を見たが、そこには均一の大きさの石が床材として規則正しく並んでいるだけだった。
代わりにどこからか地響きのような音がきこえてくる。
音の方向は丁度自分の来た道から聞こえ、いつの間にやら水がちょろちょろと流れてきている。
「もしかしなくても危険だよね、これ・・・。」
ドバァッ!!
幸の眼前で水柱が上がる。
「うわぁ!?」
逃げる隙もなく幸は遺跡の奥へと流されていった。