あれは3日前の出来事だった。

 ここはシャナ国。亜熱帯のこの国は3分の1が砂漠で占められ、砂漠の中には数多くの遺跡がある。国土の3分の1が砂漠だというのに乾燥帯ではなく亜熱帯なのは、その遺跡が深く関わっていると言われている。
 あくまで言い伝えだが、数百年前にフロンティアという大国がこの地にあった。その国は自然を操る術を知っており、乾燥帯だったこの地域に潤いを与え、亜熱帯に変えたという。各地にある遺跡がその名残である。しかし今は滅んでしまった国の力の恩恵を受ける事は不可能であり、今は少しずつ乾燥帯に戻りつつあった。

 幸はたまたま見つけた居酒屋に入った。しかしまだお酒が飲める年齢ではない為、食事をとるのが目的だった。
 まだ昼だが酒を飲む客が大勢いた。その客の誰もがガラの悪そうな雰囲気を醸し出していたが、気にも留めずに空いている席に座る。料理を注文し出てくるまでの間、地図を広げる。次の目的地はエイス遺跡。あとどのくらい歩くのか計算してみる。
 酔っ払った客が騒がしくなってきたのを目障りに思いつつ、情報収集のために料理を運んできた店員に遺跡の事を聞いてみた。
「へえ、君、考古学者なんだ。あの遺跡は最近トレジャーハンターに狙われてるから危険だよ。この町にもしょっちゅう来ていて、客が増えるのはいいんだけど暴れられるのはちょっとねえ。」
 店員は料理を出し、店の騒がしい方向を見る。そこには先程見たガラの悪そうな人達がいた。トレジャーハンターというよりは盗賊にしか見えない。
「何で最近のトレジャーハンターはああなんだろう。」
 幸はぽつりと呟いた。

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