(本当に何も知らない・・・?)
 自宅の間取りを思い出す。リビングと幸の部屋、母の部屋。それと書室があり、考古学や歴史学の本がたくさん並んでいた。
(あの本はお母さんの本だった・・・?)
 母親に読んでもいいか聞いた事がある。その時に何と言っていたか。
「・・・! ・・・幸!? 大丈夫!?
 ふいに身体を揺さぶられ、幸は意識を戻す。すると鈴音が青ざめた顔で幸を見つめていた。
「鈴音、どうしたの?」
「『どうしたの』じゃないわよ! 突然何の反応もしなくなったんだから、のぼせたのかと思ってビックリしたじゃない!」
「ごめん、ちょっと考え事をしていた。」
 幸が申し訳なさそうに笑うと鈴音は深く息を吐いた。
「もう、幸ってちょっと集中するだけでも周りが全く見えなくなるんだから。やめてよね。」
「気を付ける。」
 その言葉で安心したかはともかく、鈴音は幸の横に座る。
(ダメだダメだ。昔の事を思い出しちゃ・・・。)
 幸は顔にお湯をかけ、話題を変えた。
「そういえば、シャナ国人って元々色素が薄い人が多いんだよ。」
「へぇ。それはフロンティアが滅んだ後に色素の薄い人が多い国からも移住してきた人達がいるから?」
「ううん。色素の薄い人が多かったフロンティア人の血が混ざっているからなんだよ。」
「え? て事はフロンティア人って何人か生き残ってシャナ国に子孫を残してるって事?」
「そう。たまたま他国に行っていた人達や、国境近くに住んでいた為に被害が少なくて生き残れた人達がいるんだよ。」
「へー。って事は、幸のお父さんがシャナ国人でも色素が薄くておかしい事はないのね。」
「そういう事。」
 鈴音はなるほどと頷きつつも、ある事を思い出して苦虫を噛み潰したような顔になった。
「あ、じゃあこの前会ったエセ関西人の1人もフロンティア人の血が濃いって事?」
 鈴音が思い出したのは京一の事だろう。確かに幸も初めて会った時に日向にいるのに全然日に焼けていなくて驚いた。
「そうかもしれないね。フロンティア人でも色素の濃い人は居たから、大地の方もフロンティア人の血が濃い可能性があるし、2人とも他国にルーツがないとも言い切れないけれどね。」
「結局はご先祖様を辿らなきゃ分からないって事か。」
 鈴音は息を吐き出して身体を伸ばした。
「フロンティアは完全になくなったと思ってたけど、今に繋がっている事もあるのね。」
「今との共通点を探すのも楽しいよ。」
 幸が穏やかに笑うのを見て鈴音もつられて笑う。
「ちょっと幸と一緒にトレジャーハントに行くのが楽しみになってきた。」
 鈴音は落ち着かなくなり湯船から上がる。
「せっかく遺跡にいくんだから、ぜひ楽しんでほしいな。」
 幸も鈴音の後を追い、銭湯を後にした。

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