煙の見えている方に向かって歩いていくと、本当に銭湯が建っていた。2人は入浴料を支払い、脱衣場に入った。
「幸ってそんなに温泉が好きだったのね・・・。」
「うん。大きなお風呂って贅沢だよね。」
小さい子供のようにはしゃぐ幸を見て、そういえば幸の故郷は水源や湯を沸かす燃料が少なかったっけと鈴音は思い出す。
「まぁ、確かに自宅ではこうは出来ないよね。」
そして浴室へ向かうと、湯船の上には屋根がなく露天風呂になっていた。
「通りでよく湯気が上がっていた訳か。」
汗を洗い流してから湯船に浸かる。あまり湯温は高くなく、疲れた身体をじんわりとほぐしていく。
「はー、気持ちいいー。」
幸は腕をグッと前に伸ばす。ふとその瞬間視線を感じて顔を横に向ける。すると鈴音が幸の身体をじっと見つめていた。
「え・・・、何?」
「幸の肌ってこれ日焼けだったのね!?」
鈴音が胸元を凝視してくるので思わず腕で前を隠す。
「えー!? 幸って綺麗な小麦色の肌だと思ってたら、日に当たらない所真っ白じゃない!? どういう事!?」
「どういう事と言われても・・・。すぐ日に焼けちゃうからこうなっちゃうの。」
胸は隠しつつ湯から上半身を出す。顔や首、腕はシャナ国人らしい小麦色の肌だが、普段服に隠れている胴体は白人の血を思わせる程に白い。
「はー、こんなに綺麗に焼けるのねー。私は夏場気をつけないと真っ赤になって痛くなっちゃうのに、羨ましい。」
鈴音は湯に使ったまま幸を見上げていたが、ふとおもむろに立ち上がって幸の顔を覗き込む。
「へ? な・・・何、今度は?」
「今まで気付かなかったんだけど、幸の目って金色だったのね。もしかしてハーフ?」
鈴音の言葉に幸はきょとんとする。
「え? 私の目は茶色だよ?」
「え?」
幸の言葉に鈴音は疑心の顔になる。その表情を見て幸は洗い場に備え付けられている鏡を覗き込んだ。
「ほら、茶色だよ?」
「あら? 本当ね。」
幸に言われて鈴音も鏡に写る幸の目を見たが、確かに先程見たような金色ではない。
「あ! もしかして、光の加減かしら。」
屋根のついている洗い場から、屋根のない湯船の方へ幸を連れていくと、茶色に見えた目が再び金色に光った。
「なるほど。幸って外じゃずっと帽子被ってるから気付かなかったのね。」
鈴音は納得いったように頷いて、再び湯に浸かった。
「そうなんだ。知らなかった・・・。」
幸はぼんやりと鈴音の言葉を聞いた。
「幸は結構色素が薄いのね。お父さんかお母さんがウェリスト系なのかしら?」
鈴音が白人の多い地域の名前をあげるが、幸は難しい顔になる。
「どうなんだろう・・・。お母さんはシャナ国人で色は濃かったけれど、お父さんは知らないからなぁ・・・・・・。」
「へ!? 知らないの?」
「うん。秋山って名字もお母さんの名前だし。」
「そうだったの・・・。ごめん、深く突っ込んじゃって。」
鈴音が少し落ち込んだ顔になったので、幸は慌てて首を横にふった。
「いいよ、気にしなくて。お父さんについては本当に何も知らないから、特に思う事もないし。」
幸は努めて明るく答えたが、一方で何かが心に引っ掛かった。