「幸はこれから何処に行くの?」
 大地と京一の撤収作業の邪魔にならないように少し移動し、鈴音が話しかける。
「次の目的地はヘリド遺跡だよ。そこに着くまでに何処かの遺跡に入ってトレジャーハントをしたり、寄り道をしたりすると思うけれど。」
 そう言うと鈴音は目を輝かせた。
「ヘリド遺跡!? 私も行っていい?」
「へ? 構わないけれど、鈴音は何処か行きたい所や行く所はないの?」
「ええ! 盗賊の居る所なら、何処だって構わないもの。」
 鈴音が盗賊相手の泥棒だという事は解ってはいるが、改めて本人の口からそういった事を言われるとやはり違和感がある。
「それなら、ついてきても大丈夫だね。」
 一緒にチェルト遺跡に入った時には見事にトラップを回避していたので、過酷な道のりになったとしてもついてこれるだろう。
「ふふ、幸と一緒なら今回のような見逃しもなくなりそうだしね。」
 思わず零れた鈴音の本音に幸は二の句を継げられなかった。
「お2人さんも行き先が決まりましたようですね。ほな、わてらも撤収させて頂きますわ。」
 気付けば大地と京一は商品の入った段ボールと机を全て荷車に乗せ終えていた。
「何かお買い忘れはありまへんか?」と京一が尋ねてきたが鈴音が「ある訳ないじゃない」と毒を返す。
「次会うた時にゃ、もちっとマシなもん用意しとくさかい、買うたってな~。」
 そう言って大地は荷車を引き始める。
「またなんてあるのかしら?」
 鈴音が肩をすくませると、大地は「絶対会うやろな。」と真顔で呟いたのち「ほななー。」と社交辞令な笑顔で去っていた。
「『絶対会う』って・・・、縁起でもない事言ってくわね・・・。」
 鈴音は心底嫌そうな顔で2人を見送った。
「でも、お互い行き先のわからない私と鈴音がこうして再三会えたんだから、あの2人ともまた会うんじゃない?」
 幸の言葉に「それもそうね。」と苦笑した。
「じゃあ、湖にはもう用はないし、ヘリド遺跡へ行きましょっか!」
「うん。」
 鈴音の楽しそうな声音に幸も嬉しくなり、一歩を踏み出した。

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