「これからはちゃんと商売させて頂きます。
 ・・・という訳で、何か買っていきません?」
 京一も神妙な顔で謝ったかと思いきや、コロッと表情を変え商売人の愛想のいい笑顔になった。
「ちょっとあんた、本当に反省してるの?」
 今まで黙って事の顛末を見守っていた鈴音が思わず口を挟む。
「ですから、心を入れ替えてきちんと商売しましょう言うてますねん。お安うしますから何か買うてってくれません?」
 京一は笑顔を崩さず反論する。
 その態度に鈴音は渋い顔をしていたが、諦めたようでこれ見よがしに大きなため息をついた。
「ま、今後どうなるかはさておいて。正直に言うわ。この巾着、ダサい。」
 大地が先程積極的に勧めてきた巾着をバッサリ切り捨てる。秋津国の伝統紋様とおぼしき幾何学模様がプリントされているのだが、蛍光色でケバケバしく、しかも黄色地に青系統の色で描かれているので見ていると目が痛くなってくる。
「エキセントリックで他にない感じが個性浮き立たせてくれそうやと思いません?」
 京一は肯定的な言葉を並べているが、明らかに笑顔が引きつっている。
「やっぱりアンタもダサいって思ってるじゃない! ちゃんと商売しようと思うのなら、まずこのラインナップを何とかしなさい!」
 鈴音が怒ったのを見て、ようやく幸は机の上に並べられている商品をきちんと見た。先程と同じように目が痛くなるポーチ類や何を入れたらいいか悩むサイズの食器といった日用品から、サボテンのような刺々しい刺の生えたオブジェ、呪われそうな禍々しい顔をしたお守り人形のキーホルダー等、そこには以前見た時以上に訳がわからない品々が並んでいた。
「あかんねや・・・。このアホな在庫なくさんと金がないんや・・・。」
 すると大地が絶望的な顔をして言った。
「元々親父が商売始めたんやけど、あいつセンス皆無でこない変なもんばっか仕入れよって、元手はおろか借金までしよってん。」
「それは・・・、御愁傷様・・・。」
 鈴音が憐れみの目を向ける。
「そんで仰山人が来るいうソーズ湖の引き水の日に商売したろ思たのに逃してまうし、ホンマついとらん!」
 そう言って悔しそうに机を叩いた。
「あら、アンタ達も見逃したんだ。」
 それを聞いた鈴音はポツリと呟いた。
「鈴音はソーズ湖遺跡を見に来たの?」
 鈴音の言葉を聞き逃さなかった幸が尋ねる。
「そう。でも思いの外時間がかかっちゃって、さっきここに着いたばかりなのよ。見逃しちゃった。」
 鈴音は心底残念そうにため息をついた。
「幸も遺跡を見に来たのよね? 見れた?」
「うん、私は一昨日着いたから。」
「本当にこの量の水がなくなるの?」
「完全に引いちゃう訳ではないけれど、遺跡の大部分は水面から出ていたよ。」
 そう言って幸は遺跡の詳しい様子を伝えていく。鈴音は幸の話に目を輝かせたり、見れなかった事に落ち込んだりした。
「・・・ちょお、それわいらの目の前で話す内容か?」
 完全に忘れ去られた大地が痺れを切らして話しかける。
「別にいいじゃない。もう誰もいないんだし。」
 気づけば僅かに残っていた他の屋台もすっかり撤収し、辺りには幸と鈴音、大地と京一しか居なくなっていた。
「ホンマや・・・。もうアカンなこれは。わいらも撤収しよか。」
 大地はすっかり意気消沈し、商品を段ボールに詰めていく。

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