反対側に戻るとほとんど屋台は片付けられてしまっていた。しかしその中で必死に客を引き留めて粘っている屋台があった。最初は気にせず通り過ぎようとしたが、既視感がよぎり屋台に視線を向けた。
「せやったら、この巾着はどうや? このサイズやったら化粧品とか細々したもん仕舞うんに便利やで?」
「まぁ、確かにあれば便利だけど・・・。」
関西弁の青年2人があれやこれや在庫を引っ張り出してくるが、客の少女は弱った声で返事をしている。
しかしその声に聞き覚えがあり少女に近寄った。
「鈴音?」
「! やっぱり幸もこの湖に来たのね。」
幸の呼び掛けに振り返った少女は驚いたのち嬉しそうに笑った。
そこに立っていたのはトレジャーハンター相手に泥棒を行っている早瀬鈴音だった。
「『幸』って・・・。」
「うげっ!」
屋台の青年2人が小さく声を上げる。それに気付いた幸は青年達の顔をしっかりと見た。
1人はシャナ国人らしい小麦色の肌に固そうな癖っ毛の青年、もう1人は日焼けとは無縁の白い肌にサラサラとした直毛の青年だった。そして幸はその2人の顔も知っていた。
「あ! あなた達は、エセ関西人!」
「なんやねん、エセ関西人て! エセ違うわ!」
「いや坂本はん、わてら秋津国出身と違うから、正確には関西人違いますえ?」
幸がつけたアダ名に大地が突っ込み、更にそれを京一が突っ込む。
関西弁はシャナ国の一部の地域で使われているが、元々は秋津国の関西という地域から伝わった言葉なので、関西人と言うと意味が異なってしまう。
「せやねんけど、関西弁つことる身としては突っ込みたなってん。」
大地は顔を手で覆った。
「そんで、何です? エセ関西人て?」
京一が笑顔で尋ねてくるが、エセと言われた事に腹をたてているのか、無言の圧を感じる。
「エセ関西弁商売人って言うのが長くて。」
しかし幸も嘘の品物を掴まされた事を根に持っていたので、臆する事なく言う。
「何、そのエセって・・・?」
すると3人のやり取りを聞いていた鈴音が口を挟む。
「前にこの2人から最新版と言われて買った地図が、実際は2年は前の物だったの。」
「はぁ!?」
幸の話を聞いたとたん、鈴音の顔が嫌悪に歪む。
「あんた達詐欺師な訳?」
「そないな事してません。」
鈴音の睨みに京一が少し焦った声音で反論した。
「じゃあ幸が嘘ついてるって言うの!? 大バカなお人好しの幸が嘘つく訳ないじゃない! 人がいい女の子引っ掛けて紛い品掴ますとか最低ね!」
大バカなお人好しと言われて幸は反応に困り、顔がひきつった。