「ふん!『人がいい』ってんならトレジャーハンターなんて職業しとらんやろ。」
鈴音の罵声に大地も嫌悪を露にする。
「は? 幸がトレジャーハンターってだけで偽物掴ませたっていうの!? 何勝手な勘違いしてんのよ! トレジャーハンターってのは遺跡の安全性を調査する仕事であって、そこら辺のトレジャーハンターって勝手に名乗ってる盗賊と一緒にしないでくれる!?」
鈴音もかつて幸がトレジャーハンターというだけで盗みを働いたり嫌悪したりした事を棚に上げ、大地を叱責する。
「そんなん知るか! そもそも先にトレジャーハンター言う奴らがわいらの商売邪魔しょったんやから、こっちかてトレジャーハンター言われたらまともに商売する気もなくすわ。」
大地は吐き捨てるように弁解する。
「それで商売人の顔に泥を塗るような事をしているんだ。」
大地の言葉を聞いた幸は怒りを滲ませる。
「何やて?」
そう言って大地は幸を睨む。
「あなた達は商売人の風上にもおけないって言っているの。人を選んで偽物を売って、バレたら逃げて、逃げられなかったら全力で抵抗するとか、あなた達に商売人としての誇りはないの!?」
幸は怒りに任せて被害に遭った時に言えなかった事を言った。
「そんなんてめぇらハンターのせいやろ! 商品ぼろくそ言うて、壊して、盗んで、わいらの誇り踏み潰したんあんた達やん・・・。」
大地は威勢よく反論したが、次第に声が弱々しくなりそのまま黙りこむ。
「わてらにも商売人としての誇りはあります。でも何でわてらの気持ちをよう考えんトレジャーハンターに商品売らなあきませんの? ちゃんとしたもん売ろうとしたって取り合ってくれませんやん。」
代わりに口を開いた京一の顔からは完全に笑顔が消え、冷酷な視線を容赦なく送る。幸は少しその視線に怯んだが、一度大きく息を吸って言葉と共に吐き出した。
「商売人が客を選ぶな! 選ばれる商売人になれ!」
幸は商売が盛んだった故郷で店と客にトラブルが起きたときよく言われた言葉を2人に放つ。
「本当に商売人に誇りを持っているなら、どんなお客さんにも誠意を持って接しなきゃダメだよ。例え態度の悪かったお客さんと似たような人が来たからって、その人が同じように悪い人とは限らない。もしかしたら自分達の事を理解してくれるいい人かもしれない。それなのに相手を選んできちんと商売しないようじゃ、それこそ本当に詐欺師になっちゃうよ。」
幸が黙ると辺りは静かになった。かすかに風の音が聞こえる。大地と京一は顔を合わせていたが、その顔は動揺していた。
「何で盗賊と間違われるハンターやってるあんたにそんな説教されなあかんねん。」
「私はトレジャーハンターとしての誇りを取り戻したいの。本来は考古学者の手伝いをする仕事だって皆に知ってもらいたい。だから盗賊達と同じように商売人の顔に泥を塗るようなあなた達が許せなかったの。」
その言葉を聞いて大地と京一がハッとした顔になる。
「そうか・・・。そうやな・・・。わいらも盗賊らと変わらん事やってたんやな・・・。」
大地が苦しそうに頭を掻く。京一もバツが悪そうに目を反らした。
しばらく沈黙が続いたのち、大地がポツリと「すまん。」と謝った。