資料館を出て村の遺跡を見ていると井戸を見つけた。側にこの井戸の説明と、「水の無駄遣いはやめましょう」という看板が立っていた。大量に使わなければ別に使ってもいいらしい。
「この井戸、昔のままのもんみたいダヨ。あと飲めるって。」
 那奈実がバケツに水を入れて引き上げると幸に勧めた。どうやら怪我をした時に使った水のお詫びらしい。
 断る理由もなく、のども渇いていたのでコップですくって飲んだ。冷たい水がのどを潤し、上がっていた体温を冷やしていく。
「不思議ダネー。一度は埋もれた井戸から再び水が飲めるようになるなんて。」
「うん。再び水が出るって事は水脈が生きていたって事だから、自然の力ってすごいよね。・・・・・・もしくはフロンティアの故意によるもの?」
 ふと幸はシャナ国の言い伝えを思い出して、言葉を付け足した。
「故意って?」
「半分言い伝えなんだけれど、フロンティアは水路を造るのが上手くって、現在あるシャナ国の地下水脈のほとんどがフロンティア時代の水路だったんじゃないかって言われているの。実際一部の井戸は偶然生きていた水路に当たって出来ているんだけれど・・・、ほとんどかはどうか分からないんだよね。つまりこの井戸はフロンティアの水路を使って造られていて、かなりの災害がやってきても水の供給が途絶えないような仕組みになってるんじゃないかって事。」
「何か・・・スゴイというより怖いヨウナ気も・・・。」
「確かに。地下水脈を造り上げたり、それをどんな災害があっても耐えられるようにしたりしたのが全て真実だったら、神の領域だよね。」

 幸は遺跡を見渡した。ちらほらと屋根が崩れてしまっている家が見えるが、だいたい当時のままの姿で現在ここに立っていた。昔街路樹が立っていただろう場所は雑草が生えて芝生のようになっている。フロンティアの人々がここで生活していた事を思い浮かべると、自分達は場違いな人間のように思えた。
「『水は木を養い火の素となり、焼けた灰は土に還る。土からは金属が得られ、金属の表面には水が集まる。こうして世界は循環し、世界は肥沃になっていく。』フロンティアってそんな国だったんやろか?」
 那奈実も幸と同じように遺跡を眺める。
「多分、ね。」
 フロンティアの2種類あるマーク。その1つがまさにその事を図式化したマークである事を幸はぼんやりと思い出した。
「でもシャナ国にはこんなようけ水があるのに、砂漠が多いヨネ。」
 幸が那奈実の方を向くと、那奈実もこちらを向いていた。
「それは土が痩せているからだよ。どんなに水があったって、栄養がなければ育たないからね。動物が水だけでは生きていけないのと同じように。でもなんで土地が肥えないのかは分からないなぁ・・・。ちゃんと植物が育つ地域もあるのに。」
 首を若干傾けて考えてみるものの、自然科学には疎いため理由は分からなかった。

前へ 次へ