しかし幸が坂本の所へ追いつく前に都宮が先に到着してしまった。
「坂本はん、遅うなってすいません。」
「別にええで。しゃーないしな。」
都宮は荷車から水筒を取り出して水を飲んだ。
「都宮、あの女ちゃんと撒いたよな?」
「もちろん。何か心配事でもありますん?」
「何ちゅーか・・・やばい気がするな。あいつ他の人にないもん持っとる。」
「坂本はんのいつもの霊感ですか? 幽霊見た事あらへんのによう当たりますよね、それ。で、あのお人が第6感か何か持ったはると?」
「第6感持っとるやろけど、それ以上のもん・・・ってやばい! 逃げんで!」
坂本は途中で話を中断して荷車を引き始めた。都宮も混乱する事なく荷車を押し始めた。
(うーん、気付かれたか。)
後から追いついた幸が2人を目で確認出来る距離にまで来たとたん、2人は逃げ始めた。
(何を話していたかは聞こえなかったけれど、私に気付いたのは確かだよね。野生動物並みに鋭いなぁ・・・。)
幸も物陰に隠れながら2人の後を追いかけていく。やはり相手は荷物を持っているためそれ程速くない。ある程度距離が縮まった所で、幸はあらかじめヘッドライトから外しておいた発光石を2人の方へ思いきり投げた。
「これでも食らえっ!!」
「何や!?」
2人が幸の声がした方を振り向くと同時に発光石が地面に叩きつけられ、強烈な光を放った。
「うわぁっ!!」
2人は目をつぶり、足を止めた。発光石はすぐに光るのを止めたが、目を開けても辺りがチカチカしてよく見えない。
幸は発光石を拾ってヘッドライトに戻すと2人に近付いた。
「さあっ! 今度こそお金を返してもらうよ!」
手始めに荷車を探ろうとすると坂本が幸に掴みかかろうとする。しかし幸はそれを流して逆に坂本を捕らえた。
「くそっ!」
坂本が抵抗して腕を振り払おうとしてきたが、より一層力を加えて動けないようにする。
「離しよし!」
今度は都宮が殴りかかってきた為とっさに身体を逸らす。その一瞬のスキをつかれ、坂本が幸の手から逃れる。それと同時に幸の足首を強く蹴り、跪かせた。
「今のうちや!」
坂本がすぐさま台車を引く体制を取る。
「逃がすか!」
痛みで立てないながらも必死で台車にしがみついて引き留める。
「ええ加減諦めよし!」
都宮が幸を引き剥がしにかかる。
「嫌だ! 騙されたのも悔しいけれど、そんな商売人の顔に泥を塗るような行為は絶対に許せない!」
2人の詐欺行為がトレジャーハンターの窃盗行為と重なって見え、ますます怒りが収まらなくなって叫んだ。
すると突然幸への力が弱まった。驚いて2人の顔を見上げると、坂本は我に返ったような顔をして、都宮は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。しかしすぐに都宮の表情が冷笑に変わる。
「そんなんあなたらトレジャーハンターに言われとうないですわ。」
そう言って何かを投げつけられる。慌てて捕まえるとそれは支払った地図代であった。
「坂本はん、行きましょ。」
都宮は坂本の背中を押して荷車を引くよう促した。自身は荷車の後ろにつく。幸が突然の出来事に戸惑っていると、都宮が振り返って幸の方を見た。
「あんさん、名前なんて言いますん? 覚えときますわ。」
「えっ? あ・・・、秋山幸です。」
「秋山はん・・・か。わては都宮京一、あっちは坂本大地や。ほなね。」
都宮は社交辞令の笑顔を向けた後、荷車を押し始めた。幸は声をかけようにもかけられず、ただ2人が去っていくのを見ている事しか出来なかった。
「さっきのは一体・・・。」
2人の意外な表情と言葉が頭から離れられず、幸の怒りはいつの間にかどこかへ行ってしまっていた。