翌日、顔に直射日光が当たり眩しさに目を覚ました。目を開けると眼前に青空が広がっていた。
「・・・あれ?」
昨日は飲食店に泊めさせて貰ったんじゃなかったかと身体を起こすと、そこは屋根が崩落した建物の内部だった。
「へ!?」
辛うじて外れずにいる部屋の扉を開いて廊下に出ると確かにそこは昨日通してもらった飲食店の2階だった。しかし廊下も壁紙がすっかり朽ち、あちこちに出来た隙間から陽光が漏れ出ている。
「おじいさんは・・・?」
幸は2階にある扉を片っ端から開けていくが、どこにも人が居た痕跡はなかった。
あわてて1階に降りたが、1階の店内も昨日と様子が一変し、あちこちが抜け落ちている。テーブルやカウンターも昨日以上に大量の埃が積もっていた。しかしそのカウンターの上には昨日まで使われていたように綺麗なコーヒーポットがぽつんと置かれていた。
「一体どういう事?」
真相を確かめようと店の外への扉に手をかけた。しかし扉は呆気なく蝶番が外れて取れてしまった。
砂煙がすっかり晴れた村はどの建物も朽ち果ててしまっていた。昨日訪れた食糧品店も覗いてみたが、そこも建物に穴が開き棚に並んでいたはずの缶詰などがメチャクチャに転がっていた。
「一夜にして皆が移住しちゃったならまだわからなくもないけれど、何で建物がこんなに傷んでいるの?」
幸は呆然として立ち尽くす。そこに乾いた風が吹き、どこからか飛んできた紙くずがカサカサと音を立てた。それを見て昨日地図が煽られまくった事を思い出し、地図を取り出す。途中から正しく歩けていたか怪しかったが、大体自分がいるであろう地点を探す。そして地図上にディファント村跡地という記述を見つけた。
「ディファント村・・・跡地?」
頭を上げ、もう一度辺りを見回してみる。村名を示す看板は見当たらないが、この有り様は跡地と呼ぶにふさわしい状態だった。
「あれは全部夢だったの・・・?」
幸がポーチに地図を戻そうとして固いものに手が触れた。ポーチの中を覗くとそれはまさに昨日店員から貰った缶詰だった。缶詰を取り出し賞味期限を確認したが、まだ一月以上余裕があった。
「まさか・・・、・・・・・・幽霊!?」
思わず身震いしたが、しかし優しくされた事も思い出し暖かな気持ちも沸き上がった。
「よくわからないけれど・・・、ありがとうございました。お邪魔しました。」
幸は村に向かって一礼し、ディファント村跡地から立ち去った。