雪が降っている
これで 何度目の冬だろう―

解ける雪

傘を差さずに外に出る
しゃりしゃりと 雪の音がする
子供達のはしゃぐ声が聞こえる
静けさを求め 山の方へと向う
人工的な山の坂
車が数台通り抜けていく
所々に林がある
その中の1つに入っていく
少しずつ遠くなる 人の声 車の音
変わりに近くなる 林の声 雪の音
ちょっとした広場にある 1つの切り株
そっと雪を払い 腰掛ける
自然の音しかない世界
大きく深呼吸すると 自分の心が自然の中に溶け込んでいく

いつだったろう ここを見つけたのは
人から生まれたものから離れたくて
この林へと入っていった
あの日も雪だった
そしてここを見つけた
ここからは町が見えた
人工的な世界
しかしそれが 雪によって隠されていく

一面の白へ

好きだった
本来あるべき姿に戻ったようで
でも 今は――

昔はどの家の屋根も 同じ高さだった
同じ調子で広がっていった 白
それが今は 異様に高いビル
デコボコした街
白だけの世界に

黒が混じる

灰色が混じる

茶色が混じる

違う色が混じる

人間が混じる

もう あれから何度目の冬だろう
自然を求め ここに来たのに
ここにも人の手が忍び寄る
いつかこの林も 町のように変わっていくのだろう
雪が解けて消えていくように

雪が止んだ
雪が解ければ 人工の世界に戻っていく
そっとこの場を後にする
人工的な 山の坂
子供達のはしゃぐ声
足元でする 雪の音
自分の心も人間にもどっていく
次の冬は どうなっているだろう

あと何度 あそこで冬を過ごせるだろう




後書き 08.02.16.

雪って人が関わっているとうるさいけど、人がいなかったら静かだと思う。
雨に比べると降る音は聞こえないし、広い場所ならなおさら静かな気がする。
人がわいわい騒ぐ雪の日よりは雨の方が静かだけど、本来雪も静かだったはず。
と、いう風な感じで考えてたら出来た作品です。
私はどんな天候も好きです。もちろん雪の日も。
そんな雪のどういう所が好きなのかを、上手く表現出来ていればいいんですが。
でも、小説で書いた事と私の気持ちはイコールではないです。


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